第11章 珪線石の足音
じゃあまたね、御狐神さん。
そう言い残して、反ノ塚とやらにも礼を言ってからエントランスまで降りてきて……徐々に速度を上げて歩いてきて、俺の車を目視するなり走ってこっちに、逃げてきた。
迎えに行こうと降りた瞬間にこちらが尻もちをつかされる程の勢いで飛びつかれ、小さな声で泣きじゃくられる。
「……おかえり。頑張ったじゃん」
『もう死にたぃ』
「だぁめ、おまえにいなくなられたら俺が嫌なんだよ」
『中也さんはなんでそんなリアのことばっか考えててくれるの』
「え?そりゃあおまえ、俺は変態幹部らしいし」
『中也さんもしかしてリアのことほんとに嫌ってないの?』
「おまえは今の今まで俺と過ごしてきて本気で信じてなかったのか???」
『だって誰もリアのこと一番にしてくれないもん』
嘘つけ、ここに俺がいるだろうが。
言葉を吐き出すと共に、腹をくくった。
この女、絶対おとす。
「おまえの人間不信は今に始まったことじゃないがな、俺は諦め悪いんだ。逃がしてやらねぇから安心しろよ、嫌がられても面倒見てやる」
『……出来るんならやってみたら?どうせすぐに嫌になるでしょ、リア性格悪いもん』
「やってみろよこの優等生が。とりあえず……今日はどうする?外に何か食いに行ってもいいけど」
『そろそろ幹部のご飯にも飽きてきた頃だったのよね』
「言うようになったじゃねえか、それなら今日も愛情たっぷり込めて飯作ってやるからな」
『口に合わないって言ったのにわからないの?』
「俺に嫌わせたいのは結構だが、傷心の時はやめろそれ。悪い癖だぞ」
大人しくなって、素直に抱きついて、甘えてくる。
期待するのが怖いんだよな、分かるよ、俺にも。
『……うそだよ?』
「うん、知ってるよ」
『ほんとはだいすき……中也さんのごはん美味しいんだもん。ずっとずっと作っててほしい、ほんと大っ嫌い』
「うん」
『リア中也さんとこなら生きてていい?』
「もちろんだ、先に死んだら許さねぇからな」
『自殺するの嫌がってくれるの??』
「何度だって止めてやるよ、クソガキ」
抱き上げて車に乗せて、手を繋ごうとすると何かに恐怖したように避けられた。
『…………中也、さんに……隠すのやめた、から………………触っちゃだめ』
「……俺に何か隠し事やめてくれたの?」
『うん』
「そう、可愛い奴」