第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
『…私てっきり、寝てた方が静か、だから…だから、私に寝てて欲しいんじゃないかって…ばっかり、…』
つらつらと、安心したからか本音が流れていく。
それを聞いて彼は私を突き放すことはせず、クスリと笑ってから私をあやす様に抱き寄せた。
「なんだよ、そりゃ…俺がそんな嫌味なこと言う奴に見えんのか?そんな風に思ってる奴のために同じ布団になんか入れねえよ………もしかして、寂しかった?」
『うん。…?………えっ』
「…そうか、そりゃ悪い事をしたな。もっと構ってやらねえと」
『ま、待って、違…っ、違う!!!』
ぎゅううっと抱きしめられるのに余計に恥ずかしくなってきて、胸を押すのに離してくれない。
ダメだ、頭クラクラする。
『か、顔見えるからやだここ…っ、み、見ないで…こんな…、!』
「……今日なら、熱のせいにしていいけど?」
『!!…、…せいに、してる訳じゃない、し。…熱だから、こんなもん、だし』
すっぽりと大人しく彼の腕の中におさまって、恐る恐る服を手で握る。
するとそれに気が付いたのか、その手を取って彼の背中に回された。
ビックリしてそんなことに体をビクつかせるのだが、彼はまたずるい笑顔を私に向けて話しかける。
「熱なら、人肌恋しくなったって仕方ねぇだろ?」
『…あ、…う、ん……そう。…そ、うなら…うん………中原さん…』
「…何?…出来ることなら名前で呼んでほしいところだけど」
『……中也、って…なんか、そんな風なの……恋人みたいで、恥ずかしい』
「寧ろ恋人にしてほしいくらいなんだけどな俺は?」
『へ、…?』
思わぬ言葉に、今の今まで気がつかなかったことに気がついてしまった。
「え…お前、俺が今まで口説いてたのなんだと思ってたんだ…?」
『…い、やその……だ、だって私が売れ残ってたら貰ってくれるって、その…』
「売れ残ってたらも何も、惚れさせようとしてるって明言してるんすけど」
『………わ、私がオーケーするの待ってたの、?』
「うん、そうだけど?」
分かってなかった。
分かってなかったことにさえ気づいてなかった。
『…恋愛的に、好きなんですか…?…こん、な…子供』
「好きっつうか…好きになってってる途中かな、多分」
『……いいの、?私で』
何に、期待をしているのだろうか。
「お前だからいいんだけど」
熱のせい、だから。