第11章 珪線石の足音
行ってくる、と渋々車を降りた彼女を見送り、そそくさと監視映像に盗聴器を起動させ、ストーキングする。
舐めるなよ小娘、これが大人の力だ。
マンションの敷地に入って、いざエントランスへ……入ろうとしたところで、なぜか瞬時に壁に隠れるリア。
どうしたのかと思って見ていれば、マンションから凄まじいイケメンが歩いて出てきて……おい誰だその面の良いイケメンは。
『ぁ、……おに』
「こちらです、お世話になります」
話しかけようとした声は俺にだけは聞こえていた。
が、あまりにもか細い上に姿も見せていない状態で、かつその男は……引越し業者と話し込み始めてしまっていて。
タイミングが悪すぎる、いやそれでも話しかけて問題無いだろ妹なら。
いけ、そのまま話しかけちまえ。
『あっ……』
中に業者を誘導していってしまった彼奴の後ろから、しばらく経ってから中に入ったようだ。
きょろきょろと辺りを見渡していたところ、後ろから誰かに声をかけられたらしい。
「お〜、おかえりリア。ちょっと元気になったんじゃない?顔色良くなってる」
『連しょ……あ、あの、さっきのあの…………新しい、入居者さんって』
「ああ、まだあんま誰とも絡んでねえのよあの人。すごいイケメンだよなあ、なんか雰囲気おまえとそっくり」
『ま、まだパートナーの子は来てないのよね?……リア、お話してもいいんだよね??』
「パートナーがいようがいまいが話しかけるくらいいいでしょ、どしたのリアちゃん?」
当たり前のことを当たり前に言ってのけてくれやがった褐色刺青男に心の中でサムズアップした。
その通りだ、誰かは知らないがよく言ってくれた。
『いや、その……その…………連勝的には、リアと再会した時とかどうだったかなって』
「ええ、俺?一目見たら気付いたけど」
『……事情知ってたじゃない、連勝は』
「心配してたんだぞ?うちに助け求めてくれてどれだけ安心したか……ってリアちゃん?もしかしてあの人おまえの知り合『き、気持ち悪いって思わなかった……?』あー……えっと、もしかしてそれで避けてた感じ??」
そんなこと思うわけないでしょ、俺はリアちゃんの味方です。
言いきってくれたので良しとしよう。
『おに……み、御狐神…………さん、は……ううん、なんでもない』
「……あの人なら四号室だろ?着いてってやろっか」
『!』