第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
「二人怪我って、どのレベルの怪我を…」
『この人の作った書類ならこっちの方に…ほら、書いてあった』
「!おお、サンキュ、助かっ…」
むんず、と頭を掴まれて、緩めに圧をかけられる。
「お前、俺が布団に入ってるのなんでか分かるか?」
『リアのとこにいるため』
「そうだな。じゃあなんで俺がお前のところにいるのかは」
『リアと離れたくないのよね、可愛いなぁ中也は』
そろそろ痛いくらいに握力がかかり始めてきた。
けど折れてなんてやるもんか、折角一緒にい…せ、折角拠点にいるなら仕事してた方が時間が有効に使えるじゃない。
「病人に仕事させねぇために学校休ませたはずだよな?」
『お仕事してないよ、中也の見落としそうなところアドバイスしてただ「俺がしてるのは仕事だ…手前手伝ってんじゃねえよ、寝ろっつったろ」じ、時間の有効活用…!!』
「…お前それ本気で言ってる?」
加わる力がなくなれば、中也の表情が強ばった。
…失言だったかしら。
『……なんて言ったら正解?』
「!…正解って?間違ってるのとかそんなの、ねえぞ?…俺の顔色気にして言いたいこと言えなくなったんなら…やめてくれ、悪かった」
『…お仕事だったら、話しかけても怒られないかなって』
「怒られねえって…、なんで俺がお前に話しかけられて怒るんだよ」
え、と、思わず声を漏らす。
予想外の反応に、逆にこちらが戸惑わされる。
『だ、だって仕事するって……私なんかに執拗に絡まれたって鬱陶しいし、私はその…そ、そういう相手じゃ、ないし』
「一度でもお前に鬱陶しいだなんてこと言ったことあったか?…そういう相手って、何」
『…シークレットサービスの契約結んだってだけで…た、ただの仕事上の関係じゃ、ない…です、か』
「……仕事上の関係から、やっとお前に近づけたと思ってたんだけど?俺」
パソコンをぱたりと閉じてから、それをベッドチェストにのせて私の方に体を向ける。
「お前のこと惚れさせようとしてる身としては…些か悲しいもんだぜ?振り向かせようとしてる女にそんな風に思われてちゃ」
『あ…ごめんなさ、い』
「責めてねえよ、謝らなくていい。ただ…俺はお前のこと、ただの他人だとは思ってねぇから。どんなわがまま言われたって、悪い事してねえのに怒ったり嫌になったりしねぇよ…話しかけられるくらいで怒らねえ」