第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
〜ポートマフィア 拠点〜
「ふむ、これは…扁桃腺腫れてるねぇ。しんどいでしょリアちゃん」
『しんどくないです』
「…じゃあこの手なに?」
『…リード』
中也の服から離さまいとするように、手が彼を離してくれない。
何故かは分からないけれど、やけに昨日から彼のことを離したがらないようだ。
不思議、自分の身体のことなのにどうしてか全然分からない。
「俺は犬かっつの」
『私の犬でしょ………違う、の…?』
「…別にいいけど」
聞き返せばぐしゃぐしゃと撫でられた。
何も見えなくなるじゃないこんなの。
「とりあえず解熱剤と、あと抗生物質も出しとこうか。それと…看病は中也君がするのかい?」
「それは勿論。見張ってないとすぐにどっか行きそうですし」
『…行かない』
「嘘つけ、学校行こうとしてた奴が」
『中原さんいるのに、…どこも、行かない』
「「…」」
フリーズする二人。
しかしそろそろ座っているのに疲れてきて、ぐったりと身体がよろめいてくる。
ね、熱ってこんなものだっけ…?
『ん…む〜……』
「…しんどかったら横になってていいんだぞ?」
『中原さん遠くなるからやだ』
「お前風邪ひいたら素直んなるタチかもしかして」
『…抱っこ』
「……いいけど」
言えば軽々と横抱きにされて、一気に中也が近くなる。
それに気を良くして彼の首元に腕をまわし、彼のにおいにまた安心した。
「中也君リアちゃんに何したの?随分懐いてるねぇ」
「…俺は何もしてやれてませんよ。こいつが人懐っこいだけです」
「ふぅん?でも…嬉しそうだねぇ、中也君も」
『…中也君嬉しい?』
「!!…、お前絶対頭ボケてんだろ今……あーはいはい、嬉しい嬉しい。分かったから病人はとっとと休みに行く!いいな?寝かすからな」
何やら寝かしつけられるらしい。
あれ、待って、けどそんなことしたらこの人お仕事できなくなっちゃうんじゃ…いや、でもそれ言っちゃったら仕事に中也取られちゃうし。
私置いてけぼりになるし。
なんて、よく分からない事案に頭を悩ませる。
「何してんだよ、しかめっ面して」
『…仕事とリアとどっちがいい??』
「手前寝かしつけながらでも仕事くらいできんだよ、なめんな」
『!……そ、う…ですか』
嬉し、そう。
私に向けたその笑顔の意味は、まだ聴けなかった。