第11章 珪線石の足音
普段の態度があれだったから分かりにくかっただけで、そういえば俺が着いてこいとリードするように手を引いたら嫌がることは無かったな、などと思い返す。
大人しく……どころか満更でもなさそうにして着いてきてしまうのだ。
「あと何か寄りたいところある?」
『……中也さんとこ』
「ん?家に行くんだけど」
『だから…………こ、ここ』
くい、と外套を控えめに引かれてようやく察する。
ほんと寂しがり屋。
「そんなにそこが気に入ったんなら、ずっといる?」
『!ずっと……』
なぜだか声が沈むので、抱きしめたまま顔を覗いてみると、ぽろぽほと泣いていたのでぎょっとする。
「り、リア??」
『じゃあ、中也さんリアのこと殺して』
「いや待て、なんでそうなる。おまえに死んでほしくないからこうして一緒にいるんだろうが」
『それじゃ中也さんリアのこと置いていっちゃうじゃん』
意味が分からずに撫でるしか出来なくなれば、ぐずった彼女はまた殺してと言う。
「……分かった、ただもう少し……ちゃんと大人になって、今より幸せにさせてからな?いい?」
そうすれば少しは考えも変わるだろうと、呑気に考えていたのがいけなかったのだろうか。
『大人にとかなれるわけないじゃん、なったことないのに』
「……リア、おまえ何隠してる?」
『…………言ったら中也さんに嫌われちゃうから、言わない』
そこまで言えるようになっただけ成長だよ。
「嫌わねぇよ、言え」
『ずっと一緒にとかいられないよ、私化け物だもん』
「あ?……それなら問題ねぇだろ、俺の方こそ化け物だ」
『中也さんは人間で「違ぇよ、一緒だ」……り、あ……死んでも、死ねない』
「それは自殺が上手くいかねえってこと?」
『終われないの……すぐに、転生しちゃって』
想像以上の話を打ち明けられてしまって、車のドアを閉めて押し倒した。
「おまえ…………いつからだ」
『……なんてね、信じた?』
「リア」
『安心してよ、中也さんがいるうちは自殺やめるから』
止められるのわかってるし、なんてケロリと笑ってみせるそいつの頬に触れる。
『……なに』
「なぁ、キスしていい?」
『ダメだよ、苦しくなるでしょ』
「そんな顔させたくないんだよ」
『中也さん、責任取れないでしょ……私のことこんなに甘やかして』
「取るんだよ」