第11章 珪線石の足音
『パンケェキ』
「おう、美味い?」
『うまい』
「こっちのも食う?口開けて」
えっ、と驚いてから素直に口を開けた彼女に食べさせると、なんだか雰囲気が嬉しそう。
『中也さんもあげる』
「いいよ、おまえは好きなだけ食ったらい……えっ?なんで半泣き……り、リア??…………分かった、分かった、食べせてくれるんだな!?」
『いらないんならい「ほしいですリアちゃん」……無理してる』
してねぇよ、と口を開けて待っていると、恐る恐る食べさせてくれたので全力で礼を言って美味いとお伝えした。
なんだよ、食べさせてみたくなったのか?そんな突然?
俺がリアを可愛がるのはまだしも、逆はあんまり想像つかねぇし。
が、彼女が再び自分でそれを食べ進めようとしたところで異変は起きる。
『…………』
いつまで経っても切り分けたパンケーキを口に入れず、固まったまま赤面していらっしゃるので、違和感を感じて目の前で手を振ってみるのだが反応が無い。
「リアちゃん?」
『ふあッ!?ひゃい!!♡』
「どうした、食わねえの?腹いっぱい?」
さすがにパンケーキ八段タワー四つめだしなこいつは。
『い、いやその……えと…………な、なんでもないです』
なんでもない顔してないですよお嬢さん。
「言ってみ」
『ぅ…………い、や……だってさっき食べてもらった、から』
間接キスになっちゃうと思って。
ぽしょりとこぼして恥ずかしがる様子のそいつに、こっちが小っ恥ずかしくなる。
えっ、いや、間接キスっておまえ……
「少なくとももう二回は今したところじゃないのかそれは」
『食べさせてくれたとしか思ってなかったし』
「それはそうだがそんなに意識するか、俺としては普通にキスしてもいいんだけどな」
『中也さん!!!』
「ははっ、分かった分かった。じゃああとは俺が食べさせてやるよ、幹部命令な」
『あ、ぇ……?…………え??♡』
可愛らしい動揺っぷりだがマジで抑えた俺はよくやった。
帰ったらベッタベタに甘やかすこいつ。
『……慣れてる』
「慣れてねえよ、他の誰にもしてねぇわ」
『女たらし』
「たらしてんの見たことあんのか?」
『ま、前なんか……抱き合ってたし』
「俺はその直後につっぱねてませんでしたかね」
『やっぱり子供じゃ興味無いんだ』
「おまえにしか興味無ぇよ」