第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
「はーい、お口開けて」
『あ』
「失礼しますね〜」
舌の付け根に体温計が入ってきて、それを咥えて音が鳴るまで大人しく待つ。
「お前体温計口派か、覚えとくわ」
「リアの皮膚は色々と特殊で、ちょっと体温測るには微妙なんだよ…ミケもこんな感じなのか?そういえば」
『双熾は…多分私ほどじゃない。しかもあいつが風邪ひいてるのとか見たことないし』
「まあ、確かに病気しなさそうだもんな。…お前は無理ばっかさせられて長引かせて悪化させてばっかだったから、お兄さん今でも心配してんのよ?」
話すうちに、体温計が鳴る。
結果を見ると、中也と連勝の表情がかたくなった。
「三十九度って…お前、何が歩けるししんどくねぇだ、こんなもんしんどくないわけあるか!!?」
『?三十九度ってどうなの?平熱??』
「リア、平熱は普段の熱ね?いつも三十六度前後でしょ?今すごい熱なの、高熱。普通ここまで高くなることないってくらいのレベルの」
『…えっと?』
つまりどういうことかと問うと、今日は家で大人しく休まされることになりそうな流れになってくる。
いや、待って、それじゃあ私が今日起きた意味がない…今日は、今日だけは…
『や、やだ…今日は学校行くの』
「え?そんな熱でなん……!あ…そうか、お前今日懇親会で代表挨拶あんのか」
「代表挨拶??」
「そうそう。この子変なところこんな感じだけど、一応入試で首席だったんだよ。確か凜々蝶より点とってたはず……それで参加するんだったね」
「この熱でんなもん行かせられっかよ」
「うちん所みたいな学校じゃあ体裁も気にしちゃうわなぁ、一応青鬼院のとこから出てるって名目にはなってるし……リア、多分お前のとこのお兄さんなら大丈夫だと思うけど?」
違う、確かにそれはそうだけど、そうじゃない。
折角…折角、中也が私にって…
『……行く。今日は、行く』
「…お前もしかして俺が言ったの引きずってる?ドレス姿見たいっての」
『そんなんじゃない』
「……それじゃ、学校は休め。授業にやれるような身体じゃねえし…懇親会の挨拶だけ、しに行こう。それならいい?」
『!!…う、ん』
「ただし俺の監視付きだからな?…とりあえず今から少しでも熱下げれるよう薬貰いに行くぞ」
私の心、見透かされてるみたい。
『お薬嫌い』
「嫌いならオブラート使って飲め」