第11章 珪線石の足音
リアちゃんリアちゃん、と首領にジェスチャーでその姿を伝えられるのに、更に慌てる彼女はというと。
まさかの手で頭を抑えるという、なんとも古典的な方法をとった。
「……リア?」
『何!?なんでもないよ!!?』
頭隠して尻隠さずとはまさにこのこと。
首領の反応を見るに、あまり大勢の前にこの姿のまま出るのは良くないことなのだろう。
本人が隠したがっているのもそうだし、多分、“何か”ある。
「ちょっとだけ落ち着いてからにしよう、大丈夫か?」
ぽん、と頭に触れた途端に、煙と共に尻尾が更に二本増えた。
……え???
「中也君!」
「えっと」
「何かほら……落ち着かせてあげて!!興奮させないであげて!」
なるほど、俺のせいでとんでもなくデレてくれてしまっているらしい。
かと言ってどうすればそんな……やるか、セクハラ作戦。
最悪な事だという自覚はあるが、彼女と目線を合わせて真剣に聞いた。
「リア、今日の下着の色は?」
『へっ!!?……えと、み、水色』
「いや答えるなよ、嫌がれ」
首領からの圧が凄まじいことになっているが今はそれどころではない、どうしたものか。
『だって中也さんに聞かれたから』
「あー……悪いリア、失礼すんぞ」
『えっ、何中也さ____』
ふにゅん、と柔らかな感触のそれを、手で揉んだ。
流石にフリーズなさったようだがこれでどうだ、正気に戻ってくれないか。
「やっぱりここは育ってんだよな」
プツッ、と珍しく彼女の堪忍袋の緒が切れた音がしたところで、瞬時に頬に平手を食らわされ、吹き飛ばされる。
「悪くねぇビンタだ……おまえ、いいな」
『へ、へへへへへ変態!!!!』
ちゃんと元に戻ったのを確認して、彼女は俺からあからさまにふん!と顔を背けて出て行った。
「中也君、今のは日頃からしているわけじゃあないよね?」
「当たり前でしょう、これでもどうしたら嫌がってもらえるか考えたんですよ」
「いつの間にそんな仲良くなったの君たち」
「たった今それが恐らく元に戻りましたが」
「彼女のあの姿について、説明は聞いたかな?」
いいえ、と話せば、そうかい。と話を終えられる。
「可愛らしいだろう?ただし無闇に変化してしまうと彼女に命の危険が及ぶレベルだから」
「俺に見せて大丈夫なんですかそれは」
「嬉しかったんじゃない?」