第11章 珪線石の足音
謝りながらも着替えさせ、車の中で軽くでも食事を取らせながら拠点に到着すると、彼女は一歩後ろを歩くように着いてくる。
さて、どうしたものか……緊急出動がではない、この落ち込みに落ち込みきっていらっしゃる大天使・リア様のご機嫌の話である。
「終わったら今度こそゆっくりしような」
『いえ、べつに』
「大丈夫だよ、すぐに終わるし俺はいつでもおまえのもんだ」
『仕事してください』
舌が回る時は何かを誤魔化そうとしている時だと、よく分かるようになってきた。
実はそもそもあんまり喋るの得意じゃないだろおまえ。
首領室に到着したところで中に通していただき、開口一番首領は言った。
「ごめんねえええリアちゃん!?すぐ、本当にすぐ終わるから!ね!!?」
『……それで、内容は「すぐに中也君のお休み振り替えで付けるから!!」そうですか、それならいいです』
いや良くねええ、まったく良くねえぇぇ……
顔が全然真顔のままじゃねえか、おまえ色々言いたいことあるだろその顔は。
「首領、一応今リアは絶賛甘やかし中でして」
「うん?……うん!?ああそっか、しばらくお泊まりとか言ってたっけ……えっ、リアちゃん!!?本当にごめんね!?」
『何がですか、要件を早くお願いします』
「だって君完全に拗ねて『早く』……昨日例の子達がだね、うちに爆弾なんて仕込んであるって手紙が寄越されてしまって。リアちゃん、頼める?」
『…………いいですけど、幹部と別行動でもいいですか』
まさかの幹部呼びに戻った挙句、別行動などと抜かされてしまった。
「ああうん。中也君、それでもいい?」
「構いませんが、出来ることなら傍にいたかったところですね」
「一応本人の希望っていうか……仕事してるところ見られるのはちょっと抵抗あるみたいだから」
ちらりと見やれば、あからさまにぷいっとそっぽを向かれてしまう。
拗ねてるっつーかこれ……寂しいの誤魔化してるだけなんじゃ。
見つけて処理を完了次第殴り込みだそうで、俺は突入の指揮を執る準備に取りかかる。
すぐに整えてしまって問題がないそうだ、余程リアの腕を買っているらしい。
「……行くぞ」
『え?……えっ』
彼女の手を取って首領室から出ようとすると、間抜けな声を出して……ついでに復活なさった子狐様。
「あれ、リアちゃん?」
『?♡……え??♡』