第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
体温計の場所を問われ、しかしそれに私は答えられないでいる。
『??た、体温計…?』
「そうだよ、どこにある?」
『え、と…お、お家に置いとくものなんです、か??』
保健室とか、病院とか救護室とか…そういう所にあるものだとばかり思っていた。
とどのつまり、どういうことかというと。
「は…?…お、お前まさか体温計持ってないのか!!?」
『?は、はい…』
「…少し暖かくして待っとけ。他の誰かに借りてくる…お前多分熱あるから、下手に動き回らないように。安静にしとくこと、いいな?」
熱。
熱って、あの熱か。
『ね、熱…くらいで、そんな大袈裟な』
「大袈裟って、お前がしんどいだろうが!?」
『え…初めて、言われたそんなの』
「…!!!、なんで、お前は…っ」
『……泣かないで、?』
今にも泣きだしそうな顔で、私を抱きしめたその人。
私の話を思い出して、分かったのだろうか。
「……俺は、お前が苦しいのは…病気してしんどいのも、嫌なんだよ。心配も、するし…早く原因突き止めて治してやりてぇ、から」
震えた声で、そう伝えられる。
そして、私の家が、そういった意味でもやはり普通ではなかったのかと、再認識した。
『…病気、なの?…しんどくないよ?』
「……身体起こして、立って歩いてみ」
言われるように、ベッドからおりて歩いてみる。
うん、問題ない。
『歩ける、し…学校も、いける』
「…本当に、しんどいところはないのか?…呼吸がしにくいとか、頭痛がするとか吐き気があるとか…寒気がするとか、ふらつくとか熱いとか。…歩けるからって、そんな理由で病人が悪化させるようなことするもんじゃねぇ」
お前の身体は、まずはお前がちゃんと大事にしてやってくれ。
じゃないと、俺が悲しいから。
お前が助けを求められないのが、一番俺には苦しいことだから。
口にして言わなかったのは、私の気持ちを汲んでのもの。
それも全部、聴いたら分かった。
熱、心配されたの初めて…初めて、?
本当に?
『……カゲ様達に、看病させちゃったこと、あったかもしれない』
「…大事にされてるだろう、?…な。俺が触っただけでも熱いんだから…看病させてくれる?」
『…体温計に中原さん取られちゃうから、嫌』
きょとんと、彼は目を丸くする。
「なんだよそれ。…おぶって行こうか?」
『!ん。』