第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
外が明るくなってきたら、またいつもの朝が始まる。
違うのは、今は隣にこの人がいて…この人は私の心をおかしくしてしまう人だということだろうか。
「…リア、出てこい。学校あんだろ」
『……中也さんに顔見せたくない』
「俺はお前の顔見たいんだけど」
そう言われればおずおずと目元まで布団から顔を出して、彼の方を向く。
「………耳生えてる。…おはよ、子狐ちゃん」
『へ、…♡…あ、…は、い…♡♡』
「なんでまた布団に潜るんだよそこで」
子狐ちゃんって言った、今この人子狐ちゃんって!!!
何、ギャップ萌えどころの騒ぎじゃねえぞこんにゃろ…っ
無理矢理口調を悪くさせてもごまかせないので、諦めて顔の熱を冷まそうとするのだが。
…ていうか、私のこんな姿見てるのに、それ受け入れた上で子狐ちゃんなんて可愛がって…い、いやいや、馬鹿にして。
『…中也さん恥ずかしぃからいや』
「そう言われっともっとはずかしめたくなってくんだけど」
『……おはようございますのチューとか?』
「して欲しいならしてもいいけど?」
『な、慣れてる…やっぱりなんか慣れてるぅ…っ』
「慣れてねえよ、相手がお前だから抵抗がねぇだけで」
何よそれ、なんて何も言えなくなって益々出られなくなった。
視線を感じるだけでこれだ。
「…そうか、今日の懇親会で俺の選んできたドレス…来てくれると思って楽しみにしてたんだけどなぁ」
ピク、と耳が鮮明にその声を聞き取った。
「生まれて初めて誰かのために服なんか見繕って、すっげぇ楽しみにし『起きました』お前少しチョロすぎないか??」
『……あ、あんま見ないでくだしゃ…さい』
「…めちゃくちゃ顔真っ赤なんすけど」
見んなっつったのに。
『ふ、布団の中いたから暑かったの』
「ふぅん…?…まあ、いいけど…とりあえずその腕とっとと離し…!、…おい、リアお前…」
私の腕に触れた彼は、驚いた様子で声色を変え、私に動揺したように問いかける。
「とりあえず腕退けろ、あと悪いけど首元触んぞ。我慢してくれ」
『へ、い、いきなり何…っ、!!?中原さ…!?』
簡単に、退けられてしまった腕。
やっぱり大人の男の人なんだ、なんて呆気にとられた瞬間、額…次に首へと、触れられる。
ビクッと身体を強ばらせて耐えれば、彼は少ししてから手を離してくれた。
「…熱測れ」