第11章 珪線石の足音
「世の中に蔓延るコレクター共も考えとしてはそう変わりません、何せ“人魚”だ、そんなもの放っておけるわけもない」
「つったら何だ?手元で飼い殺して永久的に子供を産ませ続けりゃ、そういうビジネスの完成ってわけか」
「さすが、話が早い。貴方もそうなんでしょう?」
虫酸の走る話に笑みを浮かべ……奴の手の届かない位置から、目視できない速さの蹴りに異能力を乗せて、それ以上の発言を封じ、息絶えさせた。
「終わったぞ、俺一人で十分だったな」
観賞用のガラスを手で割って中のものを取り返し、思わぬ収穫を芥川に預けて蜻蛉が抱いている恋人を預かると、少し力が戻るようになっていたらしい。
外に出てからあれやこれやを外して解放し、俺の目を見た彼女は目に涙をため、ぼろぼろとそれを決壊させて止まらなくなった。
「り、リア??大丈夫だからな?な???」
見事に集まってくれてしまったらしい妖怪共に、人間のコレクターと思わしき男共。
そいつらは他に任せながら彼女を抱き寄せ、撫でつつ車に乗り込む。
「何泣いてんだよ、もう怖いもん無ぇってのに」
『……ちゅうやさん、が……どっか行っちゃって』
「ああ、悪い。おまえに聴かせたくなくてな」
『…………あっち、行っちゃうのかと思った』
あっち、というのは、俺が奴の側につくということだろうか。
「バァカ、有り得ねえだろそんなこと」
『ほんとに、ほんとにもういない??もう中也さんから離れなくていいの?』
元々離れる必要ねぇよ?と口付け、撫でると余計に雫が溢れかえってくる。
「まあ、まずは拠点に戻って首領に報告しなきゃならねぇわけだが……仮にも五大幹部の一人を殺しちまったわけだ。もちろん庇ってくれるよなぁ、リアちゃん?」
『!う、うん、それはもちろん「よぉし、後から遊撃隊も合流すんだろ。とっとと二人きりのうちに退散しちまおう」……あ、の……私、多分中也さんが思ってるよりいっぱい、身体使われてきたけど』
「……関係無ぇよ、おまえの身体は俺のもんだ」
『…………そっか。……そっかぁ』
俺の首元に腕を回して来たかと思えば、珍しく……本当に珍しく、彼女から引き寄せられ、キスされる。
我慢していたと言わんばかりの甘え具合だが、まさしく解放されたのだろう。
「ほんと俺のこと好きだなおまえ」
『誰のせいだと思う?』
「ははっ、俺だな」