第11章 珪線石の足音
拠点に戻って車から降ろすと、普段見かけないようなレアな光景に周りの構成員共は揃ってザワついていやがるようで。
まあそれはそうか、俺の腕に引っ付いてるとかおぶられてるだとかは見たことあるかもしれねぇが……俺の手を取って、自分から引いて歩いてるようなこいつの姿は誰も見たこと無かっただろうから。
かくいう俺もその内の一人だ。
『中也さん、今日一緒にお仕事行こう?』
「おまえは熱下がるまで仕事禁止だよ」
『わたしほんとはずっと中也さんと一緒にお仕事したかったの』
「ほお〜?まあ知ってるけど」
よく、笑う……下手くそだけど、心の底から笑ってる。
俺と一緒に仕事したかったって、それはつまりこれまで妨害を受けていたということなのだろうが……まあそうなのだろう、この様子だと。
「おや、随分仲がよろしいようで」
首領室に行く前に廊下でばったり。
出くわした傍から脱帽するのだが、いいよ、と言われるので顔を上げる。
まあ、大方太宰の奴から聞いてるだろう。
この子が気にしていたのは、何もAの異能力だけではない。
奴を殺したのが俺とあっては、流石に首領からのお咎めを食らうのではないかという心配。
それもあって探偵社に泣きついていたのだろうが……まあそれは杞憂というやつだ。
「で、なんでリアちゃんは私が中也君を罰すると思っているんだい?」
『!?……えっ、もしかしてお説教無し??』
「当たり前でしょ、何のために蜻蛉君に拠点の情報まで渡してたと思ってるの」
「蜻蛉!!?」
いやまあ確かにあの場に突然現れた違和感といえばなかったが。
「そうだよ?彼は私の協力者でね……ポートマフィアの準幹部の面子を潰してくれた悪党の情報を共有してくれていたんだ。それも君達の独断専行の実況付きで」
「先祖返りにあの時間からの協力要請はまずいのでは」
「だって太宰君もいたでしょう?大丈夫だよ、それに妖館の子達もリアちゃんのことは心配していたからね」
『……?』
「大丈夫、ちゃんと警備はつけていたから。今頃無事にマンションに到着している頃だろう」
蜻蛉に乗じて一部の大人、もとい変態共まで協力してくれていたらしい。
どうりで私兵の一人も駆けつけて来ねぇと思ったら。
「というわけで僕としては全くお咎めはないのだけれど、こうなると空いてしまった幹部の座が問題でねえ?」
『げっ』