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glorious time

第11章 珪線石の足音


拠点の最深部に到達すると、おぞましい部屋がそこにはあった。
爛々と輝く、コレクター品……人魚の鱗に、血痕の残る尻尾。

更には部屋中に貼られている彼女の写真。
俺の持ってねぇ歳の頃のもんまであるな。

「要するに変態か」

「手前にだけは言われたくねぇと思うぞ」

本気で分からないと言ったように首を傾げる蜻蛉にリアを預け、自身にかけられている現像を解いてもらい、奴の前に現れる。

「よォ、久しぶりだな」

「……見間違いかな、どうして貴方のような方が私の部屋に?」

「聞かなきゃ分からないほど馬鹿になったか?」

「はは、素晴らしいでしょう?この世のどんな財宝よりも価値のある娘が手元にいるだなんて……一体何の目的があるんです?中原さん、貴方とは是非一度話がしてみたかった」

「目的?」

「そう、目的です」

薄気味悪い笑みを浮かべて、そいつはそのまま語り続ける。

「私は何も、自分が不老不死になりたいわけじゃあない。そんなものになったところで絶望するのは、あの娘を見ていれば分かるからね」

「そういや婚約者だとか言って連れてこられたんだったか」

「そうそう、白波家……あそこの当主もよくやる。何せ“自分の娘を売った金で”今ものうのうと悠々自適に家族ごっこを続けているのだから」

腹の立つ話ではあるが、今更と言えば今更だ。
あいつの身内にまともな人間はいないと考えた方がいいだろう。

「あの娘は繰り返し産まれ、記憶を取り戻す……それを思い返して、一人で抱えて閉じ込められて、家族すら信用出来なくて。そんな状況で、外に出してあげようかと何も知らない他人に優しく言われれば、簡単に言うことを聞くとは思わないかね」

「ほう、そこまでして手に入れたかったのか」

「正確にはあの血が欲しかった、あの家計の……特に先祖返りの濃い血が」

知っていますか?とこちらを向いて、奴はリアについて丁寧に説明してくれた。

「あの娘はね、死んだらすぐに転生する……子孫にね。兄妹じゃだめだが、自分よりも下の世代に生まれている赤子に宿ることが出来る」

「ほう?それで?」

「子供が産まれさえすればこちらのものだったんだ……“あれ”が子を孕みさえすれば、それを手元に置き、生まれればすぐに殺せばいい」

そうすれば、無抵抗なそいつを手に入れ、飼い慣らすことが出来る。
なるほど、そんなことが狙いか。
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