第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
目の前の彼の髪をふわふわと触りながら、たまに摘んでのばしたりしてみせて、遊ぶ。
ふわふわしてるのに、髪質はしっかりしてるのね…結構くせ毛だし。
くせっ毛仲間だ、なんて。
「…野郎の髪なんか触ってて落ち着くのかお前?」
『中原さん、私と一緒でくせっ毛だなぁって』
「お前そんなに癖あるか?似合ってっけど」
『て、…天然、タラシ』
「やめろ」
『ひにゃっ、〜〜〜〜ッッ、!!!?!!?…っ、!?…ヒ、…ッか、…く、ぁ…ッ』
ギュム、と柔らかく摘まれた耳。
それに肩をはね上げて、全身に電流が流されたような刺激を感じて、その刺激の余韻が抜けきらずに身悶える。
突然の私の反応にビクリと彼は手を震わせるのだが、驚いた様子で私を見る。
「お、前…弱ぇの、?それ」
目ぇ、トびかけてっけど。
心配な様子の彼だけれど、恐る恐る…刺激しないように、優しく狐耳に触れる。
それがくすぐったい刺激におさまらなくて、私の身体を落ち着けてくれない。
好き…この手、好き。
もっと触れてて…もっと愛して、私の事。
『ぁ…、中、はらさ……撫で、てて……こ、れ好き…♡』
「…いいのかよ。腰揺らしてるけど」
『なん、か…初めて、こんな……ゾクゾクする、の…っ』
毛並みに沿って撫でられるの、気持ちいい…たまに逆毛にされるのもたまんない。
何これ、何なのこれ…蕩けそう。
「女の顔んなってんぞクソ餓鬼……お前今ならなんでもさせそうだから怖ぇんだけど」
『ん…い、よ……リア、中原さんになんでもする…』
「…マジでクるからやめろ、それ。…あと、呼び方間違えてる」
『あっ、や、やだ離しちゃ…っ』
「じゃあもっぺん呼んでみ」
『…中也、さん』
名前呼ぶの、こんなにドキドキするなんて。
無意識に内腿をモジモジさせて、それから彼の表情を見ようとそちらを向けば…私の想像していたような男の人のカオではなく、彼はただひたすらに優しい表情を向けていた。
眉間にシワ、寄ってない。
そんな表情、見せたことないじゃない…
「なに?…やっとこっち向いた」
『…、み、み……可愛、がって…?』
「それ、命令?」
『う、ううん……おねだり…』
「…やっぱり可愛いんじゃん、お前」
唇に口付けてから、彼はその唇で私の耳まで愛撫して。
呆気なく、何度も私は甘い声を漏らすことしかできなかった。