第11章 珪線石の足音
身体を楽にしようと意図的に子供の姿になってみる。
最近では割と変化するのも慣れてきたけれど、こうしているのにも少しデメリットがあって。
「リアちゃ〜ん?着替えてくるだけだから、ちょっっっとだけ待ってられるかぁ?」
『?うん??』
「…腕抱っこしてたら着替えられないんですが」
『うん、』
「お前は今日も可愛いなぁ…」
『!!えへへぇ…♡』
いかんせん、身体が中也さんを離そうとしない。
それどころか本人を困らせて、構わせて可愛がらせて嬉しがってしまう。
頭の片隅ではよろしくないと思いつつも、どうしてかこれがやめられないのだ。
中也さんは優しいから怒りもしないし撫でてくれるけれど。
「ったく、甘えたさんめ…そんなに心配しなくても俺はお前のこと好きだから。な?」
『……ほんとに好き?』
「おう、本当に好き」
『だいすき??』
「大好きだよ。愛してる」
じゅんわりと心に染みるその言葉と共に、おでこにキスされ、撫でてもらう。
聞かなきゃ、不安…聞いても不安。
そんなこと言って、私の気持ち知ってて置いてったりしないかなとか、考えちゃう。
どうしても身体が覚えてるんだ、一人にされる感覚を。
『すぐ帰ってきてね?すぐよ?絶対よ??』
「おう、隣の部屋行って着替えてくるだけだから安心し…そんな尻尾ヘタレさせんなよ可愛いなあもう???」
めんどくさいって思われてないのが不思議なくらいだ。
なんでこの人、私のことこんなに好きでいてくれるんだろう。
いつ、いきなりいらないって言われちゃうんだろう。
「ほら、チョコでも食べて待ってて」
『…いらない』
「……果物は?」
『いらない』
「分かった、秒で着替えてくるからな〜?」
手を離して、寝室から出て行った彼の背中を目に焼き付けた。
…大丈夫、中也さんは帰ってくる。
戻ってきてくれる、大丈夫、大丈夫、大丈夫____
「……、おま………横んなってろよ、しんどいだろ?ここで待ってたのかよ?」
別室のドアを彼が開けて出てきたところで、私と目線を合わせるようにしゃがんでくれる。
『まってた』
「そ、うか…リアちゃん、なんでそんな怖がりになっちまったの?色々見当はついてっけど…聞いていい?」
『…みんな、リアのこと捨てるから』
「……そうか。じゃあ俺と一緒にいないとな」
『う、…ん…一緒、』