第11章 珪線石の足音
「お邪魔します〜、リアちゃん熱出たって?お見舞い来た〜」
『連勝抱っこ』
「おお、なんで今日こんな素直なのおまえ…??」
「リアたんデレ期きた?」
『残夏くんも抱っこ』
「うわマジだこれ、リアたんがボクにまで甘えてくるとかめっずらし…」
高い高いするように抱き上げられるのに楽しくなってきた。
残夏くんもだっことかしてくれるんだ。
「中也たんどんな調教したの?これ」
「調教言うな」
『…おにいちゃんは?』
「そうたんは今外出中。ちよたんの送迎が終わったらすぐにお見舞い品調達して駆けつけるって言ってたよん☆」
『えっ、おにいちゃん来てくれるの…?』
「絶対来るからちょ〜っと待っててねぇリアたん!!!」
はい、と中也さんに預け直され、そのまま二人とも何故か退散してしまうのに手を振って見送った。
忙しかったのかな。
「御狐神も来てくれるって、良かったじゃん……リア…?」
『えっ、あ、そうだね?』
「どうかしたのか?」
『いや…おにいちゃんがお見舞い来てくれるとか、初めてだなぁって思って』
「………えっ、初めてって…マジの初めて?それとも今生で初めて?」
マジのやつ、と抱きつけば口をあんぐりとされるけれど、すぐに何か思い立ったのか、私に向けて彼は言った。
「お前さては御狐神に体調不良隠してたろ」
『なんで分かったの…?』
「やっぱりか。あいつがお前の容態知ってて見舞いに来ないわけがねえと思ってな…お前もお前で気遣い屋さんだし、そういうところほんと御狐神にそっくりだよ。ってか、そういうの気付いてそうな蜻蛉は?」
『……』
そもそも近くにいなかったし、仕方ない。
仕方ないというか…私を見舞いに来るような奇特な人の方が本来いないものというか。
「…しんどいって言えなかったのはそのせいか?」
『大丈夫、』
「俺がついてんだろ?人恋しくっても良いじゃねえの、弱ってんなら当たり前だ」
カゲ様忙しいし、おにいちゃんにそこまで言うのも気が引けるし…残夏くんも連勝も、別に近くに住んでるわけじゃなかったし。
治さんが仕事終わりに花束買ってきてくれたり、お粥食べさせてくれたのが嬉しかった。
お見舞いだからって、自分の家なのに。
『でも、中也さんお休み』
「休みでもなんでも俺はお前のパパなんです」
『……中也さんだいすき、』