第11章 珪線石の足音
「お邪魔しまぁす、そうたん連れてき…って、えっ、リアたん縮んでる!?」
御狐神を連れてきたらしい夏目と反ノ塚が再び部屋にやってきたはいい。
タイミング悪く、散々俺に泣きついた挙句、当のリア自身は泣き疲れてようやく眠りにつけた頃合いだった。
「リアが、小さく…?」
「おんぶしてるとパパみ増すなぁ」
「離れると捨てられた猫みてぇな顔すんだよ、離せねえだろこんなの」
「…なるほどなるほど、中也たんに看病させて愛想つかされるかもしれないって思っちゃってるんだねえリアたんは」
「は!?んな事考えてんのかこいつ!?」
「じゃなかったらいちいち能力使ってまでちっちゃくなったりしないでしょ〜」
本人が自覚してるかはともかく、無意識的にそう思っちゃう習慣が根付いちゃってるんだろうねえ。
夏目の言うことに心当たりが無いわけでもないらしい御狐神が、リアの頭を撫でて、申し訳なさそうな顔をした。
「周りの大人がリアのことを見ていなさすぎたんでしょう…恐らく、前世の僕もそのうちの一人だったんだと思います」
ひとりにしないで、おいてかないで。
そう泣きじゃくっていたのはいつの事だっただろうか。
生まれ変わる度、そんな思いを溜め込み続けてきたのだろう。
言える相手もほとんどいなかったんだろう。
熱を出したときに、傍にいてくれと甘えられる相手も、身体がしんどいと正直に言える相手もいなかったのか。
「…リア、御狐神が来てくれたぞ〜」
「!い、いいですいいです、わざわざ起こさないで下さい」
『ん…、……なぁに?』
「起こしてごめんな、けどお前会いたがってたろ?来てくれてんぞ」
寝ぼけ眼を擦って、御狐神を見つけたところでうぞうぞとおんぶから降りたがる。
それを察して抱き直し、御狐神に預けてやれば嬉しそうに…というより、無我夢中でそいつに向けて甘えつく。
本当に猫かうさぎのようだ…まあこいつは狐だが。
「り、リア、来るのが遅くなってすみません…身体が熱いですね、水分はちゃんととっていますか?」
『おにぃちゃん、』
「…はい、なんでしょう」
『おにいちゃん今日はどこにも行かない…?お仕事無い、?』
「!!……はい、一緒にいますよ。リアのところにいます」
白鬼院のことは夏目が今日は引き受けるそうで、それを聞いたところでリアが御狐神を呼べなかった理由に気がついた。