第11章 珪線石の足音
生まれ変わる度、子供に戻るというのは存外慣れないものだった。
そもそもの寿命が毎度長いわけでもなかったし、実際にちゃんと大人になるまで生きた試しの方が片手で数えられる程度しかなかったくらいである。
両親は毎回違ったし、兄妹もその時々で変わっていた。
しかし一人っ子というわけにはいかず、やはり他に歳の近い子供が存在する。
そんな家で、一人別邸に隔離されて監視をつけられて生活していたのがこの私。
『…送り迎えとか、大変じゃないですか?』
「そうか?」
『わざわざ車出してもらわなくても…その、今日とか折角中也さん遅番だからゆっくり出来るのに』
「遅番だからお前といっぱいいられるんじゃねえの」
そういうことを言われると恥ずかしくなる…ようになったのは最近だろう。
気が引けるし申し訳なくなるから、この人と再会したばかりの頃は任務にだってこんな風に送ってもらうなんてこと断っていたはずなのに。
休める間にそんな風に考えてくれる人がいるというだけでも、子供心としては救われる。
仕事を理由に私と共にいられず、外に連れ出すことを良しとせずに傍にいてと言うと怒った人間達は、その仕事とやらで他の姉妹と仲良く休日を過ごしていたようだったから。
ずっと感じてたし、嘘をついていることくらい分かっていた。
私の両親となる人間は、いつもそういう人間だ。
家にいる間に私の元を訪ねるなんてこと、私が体調を崩した際にも通学するよう叱責するために来るくらいのもの。
…傍にいてなんて、言ったところで平手で頬を叩かれるのがオチだった。
毎度そうだ、両親は変わっているはずなのに、どうやっても私は受け入れられない。
妖怪の混血種というだけでも気味悪がられるのに、さらに覚の力まで入っているなんて、そんな人間に触れられたところで嫌悪感を顕にされるのは当然といえば当然なのだろう。
他の姉妹たちは、ただの人間だからそれも平気で、愛嬌があるから可愛がられて……羨ましいとくらい、思ったって撥は当たらないだろうと思えばそういうわけでもなかったらしく、私が外に遊びに出てみたいと言ったら数日間にわたって反省するまで監禁されたし、それなりの恐怖を植え付けられた。
終い目には見合い話を持ってきたと、金を持ち込んできた男を私に差し向けて…
逃げ出した先で結局追いつかれて犯され、そこで今回は太宰さんに拾われた。