第11章 珪線石の足音
妖館に戻ってから、中也さんを自室から追い出してマーク君や連勝に押し付け、こもる。
もちろん盗聴器の類も全て本人に渡してあるし、これはいわゆるサプライズというものだ。
バレたら絶対させてくれないもの。
「リア、そろそろ『まだ作業中。お外で遊んでてわんわん』俺何かしたか!?」
『してたら電話なんか繋いでない』
「いやでもいきなり部屋出禁って『私が中也さんのこと嫌になるとか思っちゃうの…?』そうじゃなくても何かしたかなとは思うだろ?」
『してないからそんな風に言わないでよ』
「追い出されたら寂しいだろうが!?」
『…………ダメって言わないなら、いいけど』
許可がおりるなり即座に鍵を開けて入ってきた彼に抱きしめられ、吸われる。
そう、吸われるのだ。
「……落ち着いた」
『中也さんって結構面白いですよね』
「バカにしてんだろお前…で、何して……?料理か?」
『野ばらちゃんにお礼作ってるの。ラウンジで作ってたらバレちゃうでしょ』
「そういうことならそうだって言ってくれよな、俺だってバラしたりしねえんだからよ」
少し予定は狂ったがまあ構わない、こっそりこの人の分も作ってたってバレやしないだろう。
「俺の分はあるんですか?」
『なんでそんなこと聞くのよぉ…っ!!!』
「お前ほんと分かりやすいな」
『だって無いって言ったら中也さんがまた悲しいとか言うんでしょ』
「まあ黙っててもバレちまうだろうからなあ?けど何か作るってのに俺に作らないなんてことの方が珍しいだろうから、結構期待して聞いたんだぜこれでも」
何作ってくれてんの?とキッチンにやって来てハグし直されるので、マカロンだとそれを見せれば興味深そうにしてくれる。
「マカロンとか作ってんの初めて見るわ…へえ、模様描いて生地を……あ、もしかしてこっち俺の?」
ハート型を描いたそれを見つけて問われるのに、諦めてこくりと頷いた。
『……は、ハートとか嫌ならやめとく』
「なんで?リアからハート貰えんのは俺の特権だろ」
可愛いじゃん、と相変わらずの全肯定ぶりにキュンとした。
しれっと言うようになったわよねこの人。
『かわ、いい…?』
「俺にあげるためにって、可愛いの作ってくれようとしてるリアがな?」
『ん〜〜〜っっ、すぐそういうこと言う!!タラシ!』
「お前にしか言ってねえよ」