第11章 珪線石の足音
ぎゅう、と抱きしめられるのに胸がきゅっとなる。
半日も離れてなかったのに変な感じ…この人に触れてるだけでこんなに安心するなんて思わなかった。
『……』
「リアちゃん最初あんなに嫌がってたのにねえ、素直になっちゃってかわいい♪」
『ち、違うもん。中也さんが素直になっただけだし…は、はい!カード返す!!!』
「リアちゃ〜ん??」
『ぅ…、……あり、がと…ございます』
いいのかな、本当に。
ただでさえ一緒に住んでもらってて、生活費だって出してもらってるのにこんなにしてもらって。
いや、この人の好きでやってるんだろうし本人も困ってなさそうどころか嬉しそうにしてるのはいいんだけど。
こういう風にされると、ちょっと…かなり、不安になる。
元々ただの他人だったし、私はこの人の子供なんかじゃないはずなのに。
「何そんなおどおどしてんだよ?」
『いや、別に…』
「…お前、さてはまだ俺に遠慮してんな?」
『…………だ、って…こんな風にしてもらったこと、無いから』
「おう、じゃあゆっくり慣れていけばいい」
な、と差し出される紙袋。
中身を読み取ってみると、服に雑貨にアクセサリーと、中也さんが私に選んでくれたらしいそれらがまとめられている。
この人いつの間にこんなの買ってたんだろう。
『これは聞いてない』
「俺の休日の楽しみ方だ」
「リアちゃん、あたしからもこれ♡」
『野ばらちゃんは本当にいつ買ってたの!?』
貝殻モチーフのヘアアクセに、普段使い出来そうなものも。
私が試着してる間に買ってたなさては。
『い、いや、でも私が付き合ってもらってたのにこんな「リアちゃんのお写真撮らせてもらえちゃったから…♡」野ばらちゃん本当にそれでいいの…?』
想像以上に幸せそうなお顔をしていただけてしまって、何も言えなくさせられた。
本当に嬉しそうだ、私が何かお返ししなきゃならない立場なはずなのに。
『え、と…何か奢「お姉さんとパパがいるのに奢らせたりしないわよ?」……』
両腕を各々に引かれて喫茶店に連行される。
嫌じゃないけど、何かお返しくらいさせてほしいというのが本音だけれど。
こういう関係が羨ましかったという気持ちを思い出したのは、いつぶりだったろうか。
今生においては私はまだ学生で、この人達は大人になっていて。
本当に、ただの子供のように見てくれる。