第11章 珪線石の足音
「美味い?」
『ん、』
立原とアイコンタクトを取りつつ、食べさせていく。
食欲はあるようだけれど、いつもほど美味しそうなリアクションとはいかず、どこか落ち込んだ様子の表情である。
本人なりに気を遣ってくれているのか、話しかけたりすると笑いかけてはくれるけれども。
なんだろうか、この小さな子供にここまでされていて何も察せない俺って。
子供ねえ…子供が欲しいとか言う話じゃねえだろうしな、立原もいるような場所でこいつがそこまでナイーブな話を持ち出してくるとは思えねぇし。
「にしても、ほんとそんな歳の頃から綺麗なもんですねえ?俺が親なら過保護になってても不思議じゃねえくらいっすよ」
「は?お前が親…?リアの??」
「例え話を鵜呑みにしないでもらっていいっすか!?」
本当に当時の容姿そのままなのだろうか。
髪は今より少し短く、端正に揃えられている。
いかにもいいとこのお嬢さんといった雰囲気だ。
「口ちっちぇ〜…かわい……」
『んぐ、ッ…!?』
むせ返って咳き込む彼女の背中を慌てて摩る。
「水飲むか!?」
『だ、大丈…っ、んん〜〜〜…中也さんのタラシ!!』
「タラシじゃねえって」
『誰にでもそんなこと言ってる!』
「言ってねぇだろ!?」
『ぁ、うぅ……ほんとに言ってないなら、いいけど』
「お前さっきから俺の頭ん中読んでねえのか?」
『読んでないわよ、疲れるじゃない』
どうやら俺が想像する以上に疲れることだったらしい。
そりゃそうだ、情報を読み取るなんて疲れるよな、俺が全部間違ってましたリア様。
「言ってねえから安心して可愛がられてろ」
『…ほんとう?』
「ほんと」
食事を再開して食べさせて、ようやっとぎこちなさもマシになってきたところで、意外な人物がそこに現れる。
「……?リア殿、そのお姿は…」
『!芥川さんだぁ…♪』
「おやおや、リアちゃんまたそんな可愛いことになっちゃって。どうしたの?中也君に甘えたい時期がきちゃったかなあ?」
『芥川さぁん♪♪』
いや、首領はガン無視ですかお嬢さん。
そのまま食事を続けてくれと言われるのでその通りにはするけれど、なんで首領がこんな所に…?
「いやあ、リアちゃんの話が伝わってきたから様子見に来ようと思ってね。リアちゃん、君はまた何無茶なことしてるのかな?こっち向いて話聞きなさい」