第11章 珪線石の足音
「リア、飯用意できたぞ〜起きろ〜」
「ほんと娘みたいっすよねそうしてると」
「うちの箱入り娘は可愛いだろ」
「うわぁ、何ヶ月か前まで文句ばっか言ってたくせに」
よしよしと撫でるうちに目を覚ましたらしい愛娘は、中也さん、と俺の名を呼びながら甘えてくる。
見たか全人類、これが格の違いってやつだ。
「お〜よしよし、起きれたなぁ」
『?あれ、立原くん。…なにこれ、中也さんといちゃいちゃしてたの?』
「してねえよ、丁度飯食うタイミングだったから一緒に来ただけだ」
『…ふぅん』
「拗ねんなって!?大丈夫だよ、お前から中也さん取ったりしねえから!!」
彼女をおろせばなぜだか未だにご機嫌ななめな様子で、かと思いきや、ボフンッ、と音を立てて何かの煙が舞う。
なんだと思いつつそれが晴れるのを待っていると、中から現れたのは何とも可愛らしい縮み方をしてくれてしまった、ミニマムサイズのリアちゃん様九尾ver.がそこに…え?は???
「…り、リア?えっ、リア!?」
ひしっ、と俺の脚に抱きついてきたそいつに思考が停止する。
待て、何だこの生き物。
これ今俺が歩いたら蹴ることになんの?動けなくね?
「り、リア…ちゃん。飯食おう、な〜??」
『ふん、』
「なんで怒ってんだよ、せめて教えてくれって」
よしよししてみるも効果は薄そうで、離れようとしない。
これはあれか、妬かせたか甘やかし不足か…って、あ?
「…食べさせてやろっか?」
『……どうやって?』
手応えはある、一応。
「横でとか」
『…』
「ひ、膝の上でどうだよ」
ちょん、と小さくなった両手で手を引かれてソファーに連れて行かれる。
どうやらそれで良かったらしい。
「あんま走るなよ、危ねぇぞ」
『ごはん!』
「はいはい」
しかし移動する途中で手が離れたかと思えば、ベチッ、と音を立てて静寂が訪れる。
「…りっ、リアぁぁぁああああ!!?!?どうした、どこ打った!?どこ打った!!?」
簡単にずっこけてしまったその子に即座に駆け寄って身体を起こし、怪我の確認をする。
『……』
が、俺や立原の慌てぶりとは裏腹に、彼女はむくりと立ち上がって俺の手を引き、またソファーに向けて歩き出していく。
えっ、無視?お前今転けたばっかで痛いだろうに無視??
「り、リア?怪我は『そんなこといいから』…?」