第11章 珪線石の足音
『そんな風に言われたら私も寂しくなるなぁ…』
「それは素直に悪かったよ、けど事実だろ」
『私以外と子供とか作ったら殺すけど』
「誰が作るか、誰が」
『…中也さん、は…………冷静に考えて、私がもう生まれない方が平和的だと思わない?』
「お前そんなこと考えて生きてきたの?」
じゃなかったら荒神に会いに行こうなんて考えませんよ、と返す様子に既視感。
この表情はよく知っている。
悩んでるんだ…困ってたんだ、こいつは。
「…そうだなぁ、せめて生まれて死ぬまで大往生で、俺が幸せにしてやるまでは生きてて欲しいもんなんだけど」
『子供なんて欲しくないのに、そんな動機で作ろうとしてるとか引くでしょ普通』
「精子提供とかなら?」
『…………』
複雑そうな顔を隠してどう言おうか悩ませてしまったようだったので、ごめん、と謝った。
「どーすっかな…さすがにいきなり俺の血縁が出来るわけねぇし」
死ねって言わないんだ、とでも言いたげな目を向けてくるけれども撫で続ける。
死にたい奴がそんな話俺にするかよ、ばぁか。
『システム的に考えれば、理論としては中也さんの力がずっと滞在する形になると思うのね。だから、その…再生とか、不老とかっていう話になってきたらあの……あれでしょう?』
「…いいよ、そしたらずっとお前といられる楽しみが待ってるんだろ?」
『断ってくれないと、私本当に非道なもの作っちゃいますけど』
「合意の上だよ」
『それか、私の血液摂取しながら歳を取りにくい体質にしていくか…さすがに何世かあれば私も子供が産めるくらいにおっきくなるまで生きてられると思うんですけど』
「血液って、どうやって?」
『直接飲んで』
「…………あのさあ、殴れって…慣れってそういう??」
ジ、と見つめる様子には覚悟も宿っている様子で、やりようによっては部分的にその程度であれば痛くないようにも出来るらしい。
いや、だから噛ませろとかそんなこと言えるわけでもねえんだが。
『どの道私が身体張ることにかわりないし、その方がよっぽど楽なんですけど』
「…飲むって、どのくらい?」
『一飲み出来るくらいで大丈夫』
「…………頻度は?」
『中也さんの体質が変わるまで毎日』
頭を抱えて項垂れるけれど、他でもない彼女からの懇願である。
「推定でどのくらいだ」
『四ヶ月かな』