第11章 珪線石の足音
「お前さあ、祭り以外に何かしたいこととかねえの?」
『…あ、ごめんぼーっとしてた』
拠点に連れ帰って仕事を手伝ってもらっていれば、ぽけっとした顔をして俺の質問に書類を落とす音で返事をする。
聞かれると思ってなかったとでもいうような反応だな。
「俺のこと甘く見てねえ?パパだぞ」
『ぅえ!?わッ、!!?』
「リア!!?」
ずるっ、と何も無いところで滑ってこけて、打ったところを摩る様子に慌てて駆けつけ、涙目になったそいつの怪我を確認する。
「ったく、ほんと危なっかしいお嬢さんだな」
『……ぱ、ぱって…初めて、言われた』
「…へえ?そうかそうか、良かったなあ嬉しかったんだなあ?」
『ほ、本当に初めてなの…本当なの』
「前世を含めてってことか?もしかして」
『ん……びっくりした』
色々と心配になってくるな、こんな調子じゃ。
まあいい傾向だろうとは思うけれども。
「とりあえず氷嚢な。痕んなったらいけねぇから」
『…ぱ、ぱぁぱ』
「録音していいか???」
さすがにそれはちょっと、と拒まれはしたものの、可愛らしいリア様に万歳三唱拍手喝采の心持ちである。
リア様最高、リア様万歳。
「リアちゃんかわいい…、」
『…………あ、えっと…あの、中也さん』
「はいはい、何でしょうか」
『リアのその…み、水着とかって興味あったりは「拝ませてくれるんすかもしかして」…いや、えっと……連勝と残夏くんが海にでも行かないかって言ってきて』
「なんだあいつらも一緒か」
露骨に舌打ちしてみせれば、おどおどし始めて様子がおかしくなるリア様。
いやどうした、なんでそんな青ざめてんだお前。
『ご、ごめんなさい断っとく』
「…リア?俺の発言に一々振り回される癖がついてきてるぞ、行きたいなら行くべきだし俺を付き合わせるべきだお前は」
『え、あっ…?でも中也さんが嫌って、あの…』
「俺と二人きりでも水辺に行ってくれるんなら良し。行ってくれねぇなら野郎共と雪小路にはくれぐれも水着を見せないように」
『んん…おっぱい野ばらちゃんみたいにおっきくないけど』
「安心しろよ、俺お前相手以外に欲情できねえから」
つん、と指でつついてみればビクリと震えて、体を硬直させる。
「そんなにちっさい?」
『…あ、んまりあの…下心がないから』
「…………可愛いからなあお前」