第11章 珪線石の足音
季節は巡り、夏も近くなる。
リアは無事に中途入学を果たし、飛び級も認められて研究機関に足を運ぶことも多くなってきた。
俺はといえば、彼女がいない間の時間に暇ができる度に頭を悩ませているのだが。
「立原、お前昼間にやってる夏祭り知らねえか」
「祭りは普通夜でしょう、何言ってるんすか」
「花火「夜じゃないと見えませんて」……」
「…ああ、もしかしてリアですか?」
「そうなんだよ、察してくれたか。あいつ花火大会に行ってみたいらしくてなぁ…いくら考えてもいい案が浮かばなくて結構悩んでんだ。夜中に連れ出したらもれなく妖怪共の格好の的だろうし…いやまあそいつらは俺が何とかするけど、それだと純粋に楽しめねえだろうし」
「大丈夫じゃないすかね、あいつ中也さんいるなら何でも喜んでそうじゃないすか」
「……あいつ祭りの類に行ったこと一回も無ぇんだよ」
「ちょっと人数集めて作戦会議しましょうそれは」
知識人とリアの知り合いを集めに集めて、作戦会議。
芥川、お前そんなにリアと仲良かったのか。
「花火など僕がリアの元まで運んでやりましょう」
「間違ってねぇけど違ぇんだよそれは」
「ならば祭り会場を持ってこれば「なんでそうロマンの欠片もねぇ解決方法ばっか思いつくんだお前、天才か!?」僕はまだまだ未熟者…」
わっかんねぇ、こいつの感覚マジでわかんねえぇぇ
「そもそも無理があるでしょうよ、妖怪の相手させるために俺らが出向いた方がよっぽど現実的じゃないですか?」
「屋台が荒らされでもしたら祭りどころじゃなくなっちまうだろうが」
「…あの、リアちゃんはどうして夜の外出を控えさせられてるんですか?」
ここで響いた樋口の声に、先祖返りの事を話せば混乱している様子であったが納得はしてもらえたらしい。
「え、でもそれなら家にいる間とかも危険なんじゃ…?」
「あいつのマンションとポートマフィアの系列とは妖怪用の結界が設置されてっからな」
「その結界は祭り会場には置けないんでしょうか」
「…そういや結界とかどうやって置いてんだろうな。首領に相談した方が早そうか」
ふと、ここで自分の携帯に着信が入るのを確認してそれに出る。
「もしもし?どうした?休憩中か」
『…えっと、……今日忙しいですか?』
「全然忙しくねえよ???」