第10章 アザレアのひととき
誠心誠意の謝罪と大量の愛情をもってして何とか口をきいてもらえるレベルまでは回復した様子だったが、やはりどことなく避けられているような、怖がられているような。
任務は任務でサクッとこなしてくれた上、妙に息の合った連携を披露してくれてこの二ヶ月の間の意味が無かったのではないかと思えるほどの活躍を果たしてくれ、無事抗争に片を付けてくれてしまったし。
太宰と同等…いや、下手したらそれ以上に頭も……戦闘力もある。
『…ひ、一人で帰れます』
「お前外だと危ないんだろ?行先同じなんだからいいじゃねえか」
『後から帰る』
「ダメだ、こんな時間に女が一人は普通に危ない」
あ、UFO。
指さされた方を思わず向くと、顔面すれすれにそいつの得物が突き刺さる。
一瞬死を覚悟しそうな勢いであったので即座に顔を元に戻して、猛抗議だ。
「おまっ、今…今何して…!?」
『一緒にいられても邪魔なんですよ、寝ててもらえます?』
は?
言いかけた途端に体から力が抜け、地面にへたりこむ。
ギリギリ意識は保ってられるし、呼吸も問題なく行える。
なんだ、これ…動けねえ。
こんな季節なのに桜の花弁が舞ってやがる。
視界にうつるそいつは、何かと闘っているような。
視界が朧気ではっきりとは見えないが、そんな気がした。
それならばと、地面に触れて砂利を巻き上げ、装備してあった弾丸の残りをそいつに向けられる殺気に向けて異能力で穿ってみて。
『!?ちょっ、なんでまだ起きて…きゃっ、!!?』
「!手前のせいかこの体の感覚!?とっとと解放しろ!」
『何言って…、見ないでって「見なかったことにでもどうとでもしてやるから!」………い、やでも…』
「リア!!!」
びく、とまた少し怯えたような。
それから俺にかけられていた何かの能力が解除されたらしく、動けるようになって見てみれば、辺り一帯を…異形の何かに囲まれていた。
「……こいつらは?」
『…えっと、』
「言いたくねぇならいいわ、俺はどうすればいい?殺っていいのか?」
『!い、いい』
「俺より前に出んなよ、背中側頼む」
こく、と頷いて、俺の背中に回って武器を再び構えるそいつ。
なるほどな、こりゃあ護衛がいるわけだ。
……こいつが強くもなるし、周りに甘えられなくなっちまうわけだ。
「帰ったら怪我の手当させろよ!」
『!!』