第10章 アザレアのひととき
「んで、今日から白縹がこっちに合流しに来てくれた。諜報を暫く任せるつもりだから、こっちで陽動代わりに軽く仕掛けに行って混乱させる…そんだけ隙がありゃうちの優秀な参謀長様がいくらでも情報取ってきてくれるだろうからな」
『あの、いい加減離してもらっていいですか』
「何か質問ある奴いるか?」
『ねえってば、いつになったら元に戻ってくれるわけ』
ぐっ、ぐっ、と身体をホールドする腕を離そうと躍起になる白縹。
こういう所は女らしい、力の差はやはり歴然の差である。
膝の上に準幹部を乗せての会議、部下達は俺にどう突っ込んでいいのか分からないのだろう、皆何かを飲み込んで言わないようにしているようだ。
まあ、ここ暫くの俺の限界具合を見ていれば察するものもあるだろう。
ブレーンが一人いるのといないのとじゃ全然違う。
「は、はい。白縹…準幹部はその、お一人で諜報に?」
「そうだな、基本的に毎回そうだったし…どうだ?誰か連れていくか?」
『とりあえず降ろしてもらえます???』
「今回もそれで問題ないそうだ」
スルーしたらべしべしと腕を叩かれる。
じゃれてるようにしか見えねえなあ?
「なんと、一人で…では本格的な殴り込みは」
「情報を共有した後にそのまま作戦を立ててもらうつもりだ、相手も突破の糸口を探っている頃合いだろうし、早いもん勝ちだろうが……まあ白縹の方が早いだろ、この間のAランク任務も一人でとっとと片付けて帰ってきてたみたいだし」
『は?諜報くらい終わらせて資料まとめてきてますけど』
「天才だなああああもーーー???♪」
『さっきからそのノリ気持ち悪いってば!離して変態!』
「夕飯はビーフシチュー作ってやるからなあ!」
『ビーフシチューはいただきますけど!』
「「「仲良いなぁほんと…」」」
ちっとも良くない、と駄々をこねる子供のような反論をする白縹から資料を受け取れば、何故か本当にずらりと相手の情報が記載されており、それに伴ったプランも既に五十には絞ってきたそう。
確率の高いものを優先して、それに合わせたプランを伝えられるのがいつもの方式…なのだけれども。
『…大将同士で話し合いから決着をつけるのが一番被害が少なそうなんですが、いかがなさいますか?』
「被害ねえ……具体的に何の被害?」
『勿論相手の構成員と拠点ですよ』
「だろうなぁ?」