第10章 アザレアのひととき
『………』
外が明るくなってきた頃、あちらさんが先に目が覚めたのを察知してか俺も目が覚めて、様子を伺うかと思っていたのだが、何やら固まって何も反応が無くなってしまった白縹さん。
「…はよ、よく眠れたか?」
『……えっと、…セクハラ?』
「朝っぱらからつっこまねぇからな…体調は?」
『体調って何』
「おーおー、調子が戻ってそうで良かったよ。朝飯何がいい?」
意味が分からないといったような顔をされるのだが、既視感満載のこの状況にもそろそろ動じることなく対処出来るようになってきていて。
『いや、朝ごはんって…そもそもここどこで…………ッ!?』
明らかにホテルなどではなく家であること、そして俺の私物の多さにちゃんと色々察してくれたのだろう。
言葉を失って何も言わなくなった。
「お前昨日そのレベルでしんどかったんなら言えよな、熱ねぇのに覚えてねえとか初めてじゃねえか」
『えっと、つまりだから…どういう、こと???』
「お前が体調馬鹿みたいに崩してぶっ倒れてたから、昨日首領命令で二人揃って休暇にしてもらって、俺の家で面倒見てたんだよ」
『……な、なんか覚えてるような…?…夢かと思ってた』
いったいどの辺を夢として見ていてくれたのかは語ってくれそうにないので分からないけれど、まあ、反応を見る限り嫌ではなさそうなので良しとする。
「いい夢見れた?」
『ま、ぁ…………か、幹部の割には上出来だったんじゃないんですか』
「なんで上からなんだよ、ったく。どっか痛ぇとか、しんどいとかは?」
『…今のところは、特には…無い………です』
「力入りそう?自力で起きれるか」
『私どれだけ貧弱に見えてるんです???』
「昨日自力で歩行出来なかったから聞いてんだよ、危なそうならもう一日泊まれ」
目を丸くし、しばらく何も言わなくなって、それから。
顔を上げたかと思いきや、そいつは俺に確認するように質問をする。
『この部屋着…買ってくれたの?』
「俺のじゃかなりデカかったらしいからな」
『下着も?』
「流石に持ってなかったからな」
『ご飯もいっぱい作ってくれた??』
「お前は死ぬほど食ってもけろっとしてたけどな」
全部夢だと思っていたとは言っているが、身に覚えのようなものはあったそうで。
『………じゃ、あの…』
「…何だ?」
『!な、なんでも』