第10章 アザレアのひととき
腕に抱いて、あまり刺激をもう与えないように頭や額にキスして可愛がりつつ撫でているうちに諦めたのか折れてくれたのか、好き放題させてくれるようになったはいいが。
『先に寝ていいですからね?私…寝付き悪いし』
「おー、お前が寝てても俺がちゃんと何からでも護っといてやるからな」
『…いや、寝てくださいってば』
「普段こんな時間に寝ないんだよ俺も。けどもう寝た方が絶対ぇ健康的にはいいはずだから、寝かしつけとこうと思って」
『寝れてないのに怒んないんだ…?』
「こんなことで怒ってたら余計にお前が寝れなくなるだろ?本末転倒だし一々こんくらいで怒らねえよ」
むず痒そうな反応をしつつも、今日は一日かけて慣れてもらったおかげか、やはり何も否定されはしなかった。
声はかなり眠そうになってきてるんだがな。
「体調やられて結構寝てたせいもあるかもな、昼間普段より寝てたら仕方ねぇよ」
『…あの、お泊まりっていつまで……かな、って』
「……別にいたいならいればいいだろ。保護者がいるんならそいつに話だけは通しておいた方が好ましいだろうけど、一人暮らしなら文句言われる筋合いもねぇだろうし」
『!そ、そうなんだ?へえ…』
また、ほんの少し嬉しそうな…そんな気がする。
心なしか声も少し明るいような気がするし。
首領からの話を聞く限り、その保護者代わりとやらはどうやら他人であるらしい上にまだ自立してる人間というわけでもなさそうなニュアンスだったしな。
そもそもが親戚でもなんでもないような奴が相手なんだ、俺相手でここまで気を遣っちまうような奴が安易に甘えられる相手であるとは考えにくい。
例えそうだったとして、それならばとっくに一緒に住むなり何なりしているはずだろう。
俺のような人種ならばともかく、ここまで寂しがり屋な奴を一人で放っておくだなんて状況は、やはり他人であるという線引きがあるからこその事情なのだろうとふんでいる。
というか首領に確認したことさえある。
「まあ、とりあえず次から泊まりに来るなら服とかは用意しておいた方がいいだろうけど?」
『…次からそーする』
「おう、いい子じゃねえの」
『……♪』
しばらく撫でているうちに、寝息が聞こえてきたような。
穏やかな顔して寝てやがる。
この顔見んのが俺の特権ならいいなあ。
明日は何を食べさせてやろうかな。