第10章 アザレアのひととき
「はい、夜ご飯」
『…よるごはん』
「なんだよその反応?朝も昼も死ぬほど食いまくってたろうが」
『い、や…作ってくれるんだと思って』
「量が多いだけだからな、これくらいいいよ別に」
昼食を終えてから少し顔色も良くなってきた彼女は、自力で起き上がれる程度には体力も戻ってきたらしい。
歩くとなるとそこそこしんどそうなのだが、本人は頑として大丈夫だという主張を譲らないため、本人が無理しない程度に経過を見守ることにしたが。
『ビーフシチュー…♡』
「好きか?」
『好き!美味しそう〜♪』
「おーおー、好きなだけ食え」
『いただきますパパ』
「誰がパパだ…そんなに老けてんのか俺?」
もくもくとお行儀よく食事を開始したそいつに、言われてみれば若干の父性のような何かが目覚めそうな気がしないでもない。
が、父性にしては歳が近い…と、思われる。
「そういやお前何歳?」
『…何歳に見える〜?』
「…………十九とか?」
『へぇ、十九なら抱けるんだ〜?』
変なところに飯が入ってむせ返る。
「ブッッッ、!!?……な、なんてこと言い出しやがる!?」
『ふぅん、じゃあリアは中原さんの守備範囲外なわけね。安心安心』
下だったのかよ!!!
「守備範囲とか言うな、守備範囲とか!」
『なんで?だって中原さん、リアに興味ないんでしょう?』
「何ちょっと拗ねてんだよ!?」
『拗ねてませんけど』
「じゃあなんでそんなツンケンしてんだよいきなり」
『してない』
「こっち見て言わねぇと説得力ねえぞ」
ぷい。
顔を反対側に背けやがったそいつは、無言でご飯を食べている。
なんで怒ってんだよいきなり。
「おい、言っとくけど俺は年齢で関わり方変えたりしねえからな」
『リアより歳上のいい人と仲良くしてればいいんじゃないの』
「一番信頼してるから傍に置いてるんだろうが?」
『は…?……えっ、誰?誰かいるの本当に』
「お前だよ」
『………………ふ、ふぅん。あっそう!』
あからさまに料理を取り分けて俺にくれる。
いや、お前の愛情表現分かりやす…
「お前好きな奴いんの?」
『いませんけど』
「ふぅん?…嫁の貰い手無かったら俺が貰ってやろうか」
『そういうのは間に合ってま…、?…え、今なんて』
「相手いねぇなら考えとけよ」
『…………え……??♡』