第10章 アザレアのひととき
フレアの入ったエレガント寄りのワンピースタイプ。
本当はセパレートタイプを探していたはずが、それを見つけて吸い込まれるように手に取った。
「色そんなになら他の色にするか?白とか…おお、ラベンダーも似合いそうだな」
『…水色も嫌いじゃないよ』
「じゃあこれで…って、おい?」
ハンガーを俺の手から取って、とっととレジに向かっていくそいつは、いつ取ってきていたのか分からない彼女自身の財布を手に持っており、慌ててレジに割り込みに入ってそれを購入した。
すると唖然とした顔で俺を見つめていて、軽く額にチョップを入れておく。
「俺が見繕うっつったろうが」
『…いや、でも私の』
「プレゼントって言葉知ってるかお嬢さん?」
それらしく包装してもらった物を持ち、車に戻って彼女を座らせ、手渡した。
「もっとあったけぇのもいる?」
『!?』
ぶんぶん首を横に振って意思表示るそいつは耳まで赤くさせていて可愛らしい。
そう、可愛らしいのである。
「…他にも何か見に行く?」
『ぁ…、えっと』
指をさされた先を見て言葉を失った。
…ランジェリーショップですね、お嬢さん。
「おい、なんでこっち見てる」
『選ん「却下」な、なんで?』
なんでじゃねえわバグってんのかお前の価値観!?
下着選べってそんなもん恋人でもしねえわ!!!
…えっ、意外とするもんなのか?
最近のカップルはそういうもんなのか???
「下着選べっつってんの?俺に??」
『うん?』
「…………あんまり際どくないやつ買ってきて、それが俺の限界だ」
『…』
「分かった、店の前で待っとくから!!この通りだ下着だけは許してくれ、他はなんでも選んでやるから!!!」
『中原さん何色が好きなの』
まさかの質問に固まった。
「に、似合ってれば何でもいいんじゃねえの」
『何色?』
「………………淡めの色」
『分かった、行ってくる』
マジで買う気だあいつ。
と、そこで財布を持たせ忘れたことに気がついて再び頭を抱えることとなる。
い、行くのか…?
男が…下着売り場に入るのか???
とりあえず不審にならないよう店の入口前で待機するのだが、やはりというかなんというか、女性客からの視線はある。
白縹は白縹でちゃんと探しているようですぐに決まるようなものでもなさそうであるし、どうしたものか。
