第10章 アザレアのひととき
点滴を終えると首領は帰られて、いよいよ白縹と二人になった。
「っし、とりあえず部屋着何か貸すわ。トレーナーで大丈夫か?」
『…え、あ、はい』
「…パーカーとかシャツとかもあるけど?」
『なんでも』
「いや、楽なの選べよ」
緊張してらっしゃるのか、なんなのか。
ぎこちない返事をくれるものの、いっこうに俺の方を向こうとしない。
「じゃあとりあえずトレーナーとズボン貸すから、素材とか着心地悪かったらまた言えよ?いいな?」
『…?え、もしかして中原さんの』
「新品買いに行ったらお前しんどいだろまだ」
恥ずかしそうな反応するじゃねえか、初だなぁそういうところは。
「食器洗ってくるから着替えてろ、そのままじゃ寝苦しいだろ」
『……着替えさせてくれてもいいんですよ』
「アホか、下着見んぞ」
『パパ〜』
「誰がパパだ!ったく…後で文句言うんじゃねえぞ」
シャツのボタンを外していくのに嫌がりもしねぇ。
抵抗くらいしてほしいもんだが、まあ俺が何もしねえって安心しきってくれてるんならそれはそれで有難い信頼ではあるのだろう。
男としては複雑だがな。
前も服着替えさせろってねだってきた時、結局マジで本人がしんどかっただけだったし。
「お前、俺以外の男にこんなこと頼むなよ。襲われるから」
『…中原さんは?』
「誰が襲うか、誰が」
『襲ってもいいですよ』
「そういうことは体力戻してから言えっての」
『アタッ、』
軽くデコピンすればもうそんなことは言わなくなって、素直に着替えさせられてくれる。
とっととトレーナーを着せて、下を脱がしてズボンを履かせて、発覚した。
『…ズボン履けない』
「お前マジで細すぎ…さっきあんだけ食っといて意味わかんねぇな。下無くても寒くねぇか?」
『平気』
「そうか、後で部屋着適当に買ってくるから『そ、外出て行くの?』あー…えっと、来る??」
『…………あ、ごめんなさい』
いや、なんで謝るそこで。
「来ていいぞ、お前の服だし」
『…でも、あの……』
「おいで」
両手を広げて見せれば、ぽす、と胸元目掛けて体を預けてきた。
よーしよしよし、と撫でくりまわして可愛がってやればそのまま大人しくなる。
ああ、首領が言ってたのはこういうことか。
「一緒に来る?」
『……うん』
「言えるじゃん。いい子」