第10章 アザレアのひととき
「中也くん、ちょっと……ごめんねリアちゃん、ちょ〜〜〜っとだけ中也くん借りるね〜??ご飯食べて待ってて♪」
促されるまま強制的にリビングに連れ出され、寝室の扉を閉めて項垂れられた。
「…中也くん、何今の」
「何って、とりあえずあいつの面倒を見る意思表示をと」
「いや、うん、確かに大当たりだったけどリアちゃん困惑してたじゃない!?いきなり養われるくらいの勢いでとか言われても分からないから!ていうか本当に養うつもりあるの!?」
「構いませんがそれくらい…」
「……本気?」
「は、はい」
「あの子のこと途中で捨てたり一人にしたりしない?」
「そりゃもちろん、あんな寂しがり屋ほっといたら孤独死しそうじゃないですか」
盛大なため息と共に、どっと何かを吐き出した首領に肩を掴まれる。
「…それ言ったら本当に、あの子君から離れなくなるよ?言っていい?本当に言っていい???」
「はい、どうぞ」
「君も君でそういう所あるよねぇ…ああ、うん、とりあえず何日間かお泊まりさせてあげるって方向でいいかな。いきなり同居とか言い始めたら多分また怖がらせちゃうから」
「俺なら絶対捨てませんよ」
「分かってるけど本人の傷がまだ新しいみたいなんだよ、だから養うとか面倒見るとか、一緒に住むとか…あの子が言い始めるまで一旦、提案するのは待ってあげて?お願いだ」
アプローチとしては間違っていなかったらしいが、アプローチにしても最初から直球で本命を射止めすぎていたらしい。
…まあ、それでもっと懐かれるなら懐かれるで俺は構わねえわけなんだが。
口説く以前に仲良くなろうとしてる最中だしな。
「分かりました、首領が仰るなら」
「頼むよ?本当に頼むよ???あの子本っっっ当に中也くん大好きなんだから本当の本当に頼むからね???」
念押しされるのに頷けば、寝室に戻る。
「リアちゃんごめんね、いきなりビックリさせて。とりあえず君の体調が全快するまで中也くんが一緒にいて見ててくれるらしいんだけど、どうかな?」
『…一緒に?どうして?』
「リアちゃんが体調崩してるの心配なんだって」
「…とりあえず、俺が見て元気になってるって判断できるまでは泊まってろ。あんまり動き回るなよ」
『…………何にもしないのに家に置いといて、邪魔じゃないの』
「俺が見てねぇと心配だからいいんだよ」
