第10章 アザレアのひととき
パクパク、もぐもぐ、パクパク、もぐもぐ。
あれだけ作りに作った、ビュッフェと言われても過言ではないような量のそれらを延々と食べ続けるそいつ。
運んだら運んだだけ食べ進めるし、それでいて何ともまあ美味そうな顔をして食べてくれる。
いや、量バグってんだろどうしたお前。
その細っこい体のどこにそんな入ってんだ、体積おかしいだろどう考えても。
「リアちゃんほんとよく食べるねえ、普段からそれくらいちゃんと食べて欲しいものだよ、切実に」
『?食べてる』
「嘘はダメだよ、君昨日“能力”使ったんでしょ」
「!能力…ですか?」
「そうそう、昨日の記憶が二人揃って抜け落ちてるなんて…それもちゃんと窓も玄関も施錠されてて開けられた痕跡も無くてそれなんだもの。リアちゃん、中也くんと自分の記憶いじったでしょ」
って言っても覚えてないんだっけ、と苦笑するその人に、そいつは黙々と朝食を食べ進めるまま。
「…えっ、お前そんなこと出来んの?」
『応用すれば、まあ』
「連日ご飯抜いてまともなエネルギーもなかったくせしてそんな大技使うから倒れるんだよ、反省してね?」
ぷい、とそっぽを向いたリアに、笑顔のまま首領が畳み掛ける。
「反省、してね???」
『…そんなこと言われましても』
「何があったのか君達二人が分からないなら、流石の僕でも分からないけどねえ…よっぽど何か思い詰めてたんでしょ、色々しんどかったみたいだし」
『なんの事ですか?』
「中也くんも話くらい聞いてくれると思うけどなあ〜?」
『リアご飯食べるのに忙しいから』
いや、マジでよく食うなこいつ。
「はは、まあ君が思い出したくなくて消したんなら誰も文句はないだろうけど。……でもねリアちゃん、中也くんの分まで消しちゃわなくても、多分大丈夫だと思うよ?」
『…喧嘩してそれ誤魔化してるだけかもしれませんよ』
「君は賢いし、そんな事のために死にかけてまであんな力使わないでしょ」
『じゃあ自殺しようとしただけかも』
「それなら確実に死ねる方法をとるでしょ、何回自殺未遂してきてるの君?」
どこかで聞いたことがあるような響きだな、なんて思いながら様子を見守る。
…こいつが俺の脳までいじって消したいような事って、何なんだろうな。
自分のメリットのために動くような奴じゃないのはもう分かってる。
『おかわり』
