第10章 アザレアのひととき
「リアちゃん何日ご飯抜いたの?君の燃費で、何日分抜いたの???」
『い、やあの、森さんなんでここに中は……か、幹部が!』
「あ?ここ俺の家だぞ」
訪れる静寂の間。
ハッとしたように動き始めたそいつはとっとと布団を捲ってベッドから飛び出すように降りて…盛大に転ける。
『い…ッッ、〜〜〜〜〜…!』
「あーあー、何してんだよ病人だろ!?大人しくしてろ…、って……」
起こしたところで、そいつの身体が以前にも増して痩せていることに気が付いた。
そういや朝ベッドに上げた時も馬鹿みたいに軽くなってやがったか。
「腕点滴ついてんだぞ、大人しくしてろ」
『点滴…っ、て…?あ、れ…ほんとだなんで』
座っているのもしんどそうなそいつを再び抱えあげれば驚かれるも、それに構わずベッドに戻してやって、布団をかけ直す。
「知らねえうちに俺の家にいて、知らねえうちにぶっ倒れてそこの床の上にいたんだよ。勘弁してくれ全く、心臓に悪いったらありゃしねえ」
『……放っておいたら煩わしい奴が一人死んでたかもしれないのに?』
「誰がいつお前に煩わしいっつったよ」
『だって中原さんリアのこと嫌いでしょ…?』
また何を言い始めてやがる、このクソガキ様は。
「あのなあ…嫌い云々以前に考えろ?この俺の家に不法侵入してきた奴がいたら、好き嫌い以前に問答無用で処刑対象だろ普通は」
『だったら何、私に尋問してから殺すってことですか』
「お前だから殺してねえし、首領に足を運んでもらってまで容態を見てもらってるんだろうが!?馬鹿かお前は!」
『……どういうこと?』
「リアちゃん、君中也くんに特別扱いされてるってことだよ?可愛がられてるじゃないの」
『……………えっ、なんで否定しないの中原さ…、あ、え?…な、なに、何す____』
近付いて、手を伸ばしたところでギュッと目を瞑って身構えるそいつの頭を撫でてやる。
ったく、誰がこんな奴相手にわざわざ嫌ったりするかよ。
そんな体力使うなんざごめんだ俺は。
『…、?』
「何か食えそうか?朝飯作ってっけど、食べる?」
『…………!!?えっ、中也さんの手作り…、?』
「おー、この間はよくも作ってる途中で逃げてくれたな」
『なんでまた作ってくれ…つ、作ったんですか』
「栄養失調って言われたばっかだろお前。食わなすぎだ、たらふく食えよ」
