第10章 アザレアのひととき
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朝目が覚めたら、まずは飲み物をいれるべく起き上がる。
とっとと家で資料の確認を進めてから仕事を円滑に進められるよう、朝からの習慣…が、いつもと違うことに気がついた。
ベッドから降りてリビングに行くところで、ふと目に入ったのは人間。
それも、見知った女。
布団の中ではなく床の上で倒れているそいつに驚いて、思わずうわ!?と大声を出してしまったのにも関わらず、寝覚めのいいはずのそいつ…白縹 リアはビクともしない。
なんで家に…それも寝室にいる?
いや、それもそうなんだが様子が…何か……
「お、おい…白縹…?どうし……!?」
肩を揺すっても起きる様子がないので仰向けにしてみたところで、顔色の悪さに気がついた。
冷や汗までかいて具合も悪そうで、そして何より…体が異常に冷たいのだ。
焦って連絡する先は一つ。
この時間から申し訳ないとは思いつつ、あの人がこいつを可愛がっていた日頃の様子を信じて助けを求めてみる。
ベッドに移して布団をかけ、電話が繋がるまでの間に暖まれるようなものを準備して。
そうしているうちに繋がったそれの向こうにいる人物に、不躾ながら朝から頼み込むことにした。
「どうしたんだい中也くん?朝から電話だなんて珍しい」
「すみません首領、それがその…何故か朝起きたら白縹が家にいまして」
「!!遂に何か進展が!?」
「そうではないのですが、床に倒れてて。怪我してる様子もないんですが、起こしてみてもびくともしないし顔色悪いし、体が馬鹿みたいに冷たくて」
「…おや、すぐに診に行こうか。中也くんの家で合ってる?」
「!?いえいえいえ、俺がアジトまで急いで連れて行きますから!」
「いや、人気のない場所の方がいいかもしれないからそっちに行くよ。呼吸は?安定してる?」
少し浅いかと、と話したところで次なるミッションを与えられる。
「眠ってる?」
「は、はい」
「昨日はリアちゃん、何してた?」
「えっと…それが、すみません。昨日の…こいつのことを思い出そうとしても思い出せなくて」
「…………ああ、成程ねえ?…うん、じゃあ中也くんに一つ頼んでおこうかな」
何でしょうか、と返したところで、一言。
「リアちゃんに朝ごはん作ってあげててよ。たっぷり…それでいて栄養のあるものをね。嘘みたいな量食べるだろうから、沢山愛情込めて作ってあげて」
