第10章 アザレアのひととき
「おはようございます、本日も二人仲がよろしいようで」
「ああ、おはよう御狐神。ちょっと今すげぇリアが拗ねてて『は…?そう君とお話してばっか』挨拶しただけだろ今のは!?」
『狐から狐に鞍替えするなんていい度胸じゃないっ、そう君の方が多少リアより尻尾おっきいかもだけどぉ…!』
「…ええっと、これはいったい?」
「さっきちょっとからかったら離れなくなった」
全てを察したような目を俺に向け、御狐神は今日も仲がよろしいですね、と繰り返して笑う。
傍から見れば微笑ましい光景なのだろうが、リアさん本人からしてみれば本気なんだよなあ多分。
「!!リアちゃん、おは…リアちゃんんんん!!?」
と、そこに現れる雪小路を見た途端にボロボロ泣き始め、ついには俺の腹に抱きついてきやがった。
いやいや、いくらなんでも真に受けすぎじゃ…って、あ。
こいつ生理始まったっつってたっけ。
「何、何したの中原?あたしじゃないわよね?」
「あ、ああ、間違いなく俺が『中也さんっっ』ごめんごめんごめん!!?お前が一番だから落ち着けって、な!?」
「うわぁ、またリアちゃん泣かせたの中也さん」
「中也たんまた泣かせてる〜」
俺じゃねえよと反論できなくなってきたな。
リアが泣いてるだけで集まりすぎだろこいつら…ってそうか、学生陣は学校か今日。
「…ふふ、そっかあ、リアたん中也たんに意地悪されたの本気にしちゃったんだ?」
「そういうことだ、しかも言い出しっぺもリアの方」
「リアたん大丈夫だよ〜、放っておいてもこの人リアたんにしか興味無いから安心しな〜?」
『…』
あれ、寧ろ逆効果になってねえかこれ?
なんか力強くなってる気が。
「り、リア…?デート行くだろ?な〜??」
『……』
テコでも動かねぇぞこれ、どうしたもんか…
「リアちゃん、中也さん困ってるよ?いいの?」
ここで鶴の一声ならぬ、反ノ塚の一声が入る。
『…リアは困っててもいいの』
「何に困ってるのか教えてあげなよ、じゃないと中也さんも何にも分からないでしょうが?」
『…………中也さんは関係、ないもん…しばらくそっとしといてくれたらいいじゃん』
俺に関係ないわけ____
「…?……リア、何考え込んでる?」
『別に』
「こんなんで外出れねぇだろ、ちゃんと話そう」
『早く行こうよ』
「………焦ってんの?」
