第10章 アザレアのひととき
朝してくれた話…強がってんのが見え見えなあの話。
自分の中でいつからかずっと溜め込んでいたそれを、どうしてこんなタイミングで話してくれたのか。
不安感が強まって、つい言ってしまっただけだったとしたら?
自分の中で整理が出来て話してくれたわけじゃなく、俺に言いたかったのをこれまで我慢していただけだったとしたら?
『何が』
「ここで言っていいのかよ?……俺に言えばいいだろ、そこまで言っといて何遠慮してやがる」
『意味わかんな「一言、助けてって言ったらいいだろうが」…』
自分が死ぬことを口実にしねぇとデートしてとも言えねぇくせに、何全部言ったことにして誤魔化せると思ってやがる。
俺に忘れろだの関わるなだの言っておいて、結局知ってて欲しいんだろうが、めんどくせぇな。
一回りも二回りもさせて、めんどくさいことしちまってよお…気の引き方も分からねぇくせに変にいい子ちゃんなせいで俺に遠慮して、俺の事ばっか考えて。
めんどくさくて、かわいい奴。
「言っちまえ、困ってんだろ」
『…困ってない』
「じゃあなんでそんな泣いてんだよ」
『中也さんが浮気しそうだったから』
「俺が浮気とか本気で思ってんならマジで一回説教すんぞ」
『お、怒ったら嫌いになるから』
「なれなれ、いくらでもまた好きにさせてやるよ」
『ぅ…、や、優しくしてよ』
ぎゅん、と胸の奥が握りつぶされたような気がした。
そ!は反則じゃないですかねリアさん、いきなりそんなデレんの?えっ???
「優しくしてない?」
『……だって、いきなり手離した』
「うんうん、怖かったな?」
『リアのこと忘れたら、そうやってどっかいっちゃうんだ』
「忘れんなって言っときゃいいだろ?強がってあんな風に言わなくていいだろうが」
「…ああ〜、成程?……リアたんそんなの視ちゃったのね。チョコレート食べる?」
ニコニコしながらリアにチョコを差し出す様子に、ギャラリー一同で目配せしてアイコンタクトを取る。
絶対何か入ってんなこれ。
『チョコ…?くれるの?』
「うん、リアたんにあげる♡他の子にはあげないんだからね」
『残夏くん好き』
「食べて食べて♡」
ぽい、と簡単に口の中に放り込んで食べてしまう。
えっ、食べんの?こんな不自然なタイミングでいきなり出されたチョコ食べんのこいつ???
「ぺっしなさい!?」
