第10章 アザレアのひととき
ラフな格好の中也さんは休日でもレアなもの。
ラフといえども、外出の際の街着の範疇であるそれから覗く彼の鍛えられた腕や首元を見るだけでも顔に熱が募るほど。
…カジュアル中也さん、いい。
「忘れもんねぇな?携帯持った?」
『うん〜…♡』
「何だよその反応」
『なぁんか…プライベートみたいだなあって』
「俺のプライベートなら毎日堪能してるだろうが」
『わっ、!?あ、ああああんまりこっち来ないでください!』
「…………分かりやす。もう何回も見てんだろ」
言いながらボタンを一つ止めてくれるあたりが優しい。
そういうところがたまらなく好きなのでハグしておく。
「男耐性レベルが小学生以下のリアちゃんが来たな…って、ああ、お前あれか。父親と風呂とか入ってねえから余計にか」
『…まあ、うん』
「おい、なんだその顔は…って、ああ、あ〜…………察した。…つまり餓鬼の裸しか見たこと無かったと」
『ほとんど見てないもん』
「そういや俺には脱ぐなっていっつも言うもんなぁ?」
よちよち、なでなで。
あからさまな子供扱いにそれをベチッ、と叩き落とした。
『中也さんきらい!』
「はい、ご飯出来ましたよ」
『中也さんのご飯は好き…』
くっ、くっ、と喉を鳴らして笑いをこらえる様子にべし、と背中をはたいて抗議するも効果はなし。
「こら、俺の事叩いたらお前の手の方が痛ぇだろうが」
『別に痛くないし!』
「前マジで痛かったから学習して威力抑え目にしたんだよなあ?賢いなあリア〜♡」
『ご飯早く食べさせてよ!!!』
「仰せのままに♡」
『なんで嬉しそ…っ、ちょっとくらい嫌がる素振りくらい見せたらどうなの!?』
ぴく、と反応してから、彼の手が私から離れる。
…えっ、え?ちょっと、何これ。
「じゃあ、今日は向かいあわせで食べようか」
『…横は?』
「リアさっき俺のこと叩いただろ、ちょっとだけ反省しなさい」
『でもさっきご飯食べさせてくれるって、』
もうそんな歳じゃねえだろ、なんて突き放したような言い方をされて、みるみる耳も尻尾も垂れていく。
『なんでそんな酷いことするの…っ、?』
「ほら、飯食わせんの嫌がっただけで泣くじゃんお前!?嫌がる振りとかもうさせんなよ!?懲りたな!?分かった!!?」
『やじゃない?一緒食べてくれる??』
「食べるから!」
