第10章 アザレアのひととき
『マークくーん、あーそーぼー!』
ガチャリ。
合鍵で問答無用で玄関を開けて中に侵入し、マーク君を叩き起こしに行く。
『…あれ、なんだ起きてるじゃん』
「……り、リア?ツッコミどころが色々あるんだけど」
『買い物行くでしょ?今日お休みだから一緒に行こうよ』
「その前に!不法侵入!!」
『ここ私の部屋だもん、鍵変えてないマーク君が不用心なだけよ』
「普通に犯罪だからねこれ!?僕だからいいけどしちゃダメだから!!」
『マーク君許してくれるって知ってたから入ったのよ?えらいでしょ』
じゃなくて、と壁に追いやられて軽く手をついて閉じ込められたところで、彼の声が近くに来る。
「こういうことされたら危ないでしょって言ってんの」
「何のためのシークレットサービスだと思ってんだよ」
「あぃたたたたたた!、?!!?!?」
が、即座にそれを剥がしてしめてくれるうちの優秀なわんわんによって強制的に終了させられた。
「何、君まで入ってきてたの!?」
「は?うちのリアがこんな可愛い格好して入るんだぞ、襲われねぇわけねえだろうが」
「ゴミを見るような目で見ないでくれる!?僕襲ってないからね!!?」
「襲うくらい可愛いって言えやコラ」
「いくら可愛くても彼氏持ち襲わないから!!!」
中の良さそうな、二人。
ふぅん、結構喋るのねこの人達。
ぐい、と間に入るように無理矢理べり、と二人を引き剥がしてはさまってみる。
二人の世界に入っちゃうとか聞いてないんですけど。
「えっ、何リア可愛い〜♡構って欲しくなっちゃったの?♡♡」
「気色悪い声出してんじゃねえ、リアはこっちに来るんだよ」
「そんなに乱暴にしないでよ、リアは繊細なんだからもっと丁寧に扱ってくれる?あんな脳筋じゃなくてこっちにおいで、昨日はよく眠れた?頭痛いとか何もない?」
『!?ぅ…、えと、大丈夫』
「!?」
突然のお兄ちゃんムーブをかまされて驚いた。
「本当に?」
『ほんとだって』
「それならいいけど…ほんとだ、今日はいつもよりおめかししてるね。可愛いじゃない♪」
『〜〜〜っっっ、』
ぺちぺちとチョップして余計なことをこれ以上言わせないようにしてやった。
「お前ら結構仲良いのな?びっくりしたわ」
『ま、ぁその…マーク君根っこの部分は紳士だし』
「お前の好きそうなタイプだな」
