第10章 アザレアのひととき
兎にも角にも、休日だ。
まあ、中々片付かない拠点の代わりに妖館内でする仕事があるにはあるのだけれどもそれは夜でもいいだろう。
「今日のお召し物は?」
『中也さんにモテそうなやつ』
「お前毎回それじゃねえの」
『今日の中也さんはどんな気分かなぁって思…、?な、なになに??』
「……久しぶりに服見に行くか?」
こんなにいっぱいあるのに?と聞くと、欲しいもんは持っとけばいいだろとまさかの甘やかし発言をいただいてしまう。
『えっと、何か気遣ってません?』
「気遣って何か問題あるか?いいだろそれくらいしても」
すぐさま決められていく本日のお洋服は、少しかっちりめのエレガントスタイル。
…ふふ、ちゃっかりスカート選んじゃって。
そんなにお姫様扱いしたいんだ。
「何だよ」
『中也さんがスカート選ぶの久しぶりだなぁと思って』
「デートのつもりなんですけど?」
『お休みの度にデートしてくれて嬉しいなあ…♪』
デートといっても、外でまったり一緒に時間を過ごすといった程度でかまわない…はずだったのだけれど、本日の彼はというとそういうわけにはいかないらしい。
「気合い入れてめかしこんでやるよ、後で写真撮らせろ」
『中也さんほんとリアの顔好きよね?』
「やっと気づいたかこのやろう」
あ、え、からかったつもりだったのに認められちゃったどうしよう。
……顔好きなんだ、へえ…?
「自分で言っといて照れんなよ」
『て、照れてない』
「尻尾出てますけど」
『これはこういう仕様なの!中也さんがリアのこと買った頃からそうだったでしょ!!』
「家電みたいに言うなよ」
思っていたよりツボに入ったそうで、面白おかしそうに笑ってくれる。
お付き合いしてから分かったことだけど、この人結構馬鹿なことにも付き合って笑ってくれるのよね。
「外に出すのが勿体なくなってくるなぁ、こうも可愛いと」
『中也さんの可愛い攻撃はもう効きませんからね』
「……リアちゃん今日も可愛いぞ」
『そんなこと言っても何も出ないからね!?』
「尻尾十本とも生えてんぞ、おい」
よーしよしよし。
わしゃわしゃと本当の狐にするみたいに撫でくり回され、可愛がられて。
「一応聞いとくけど、今日はマジでデートってことでいいんですよね?」
『うん?マーク君にも声かけようか悩んでたけど』
