第10章 アザレアのひととき
私の想像するような、普通の家の娘のように扱われるのはいつぶりのことだろうか。
身体の関係があるわけでも、恋人になったわけでもない…養子になったわけでもない。
「んで、いつなら空いてる?」
『どうして?』
「今度こそ俺とデートしてくれません?」
『…はい、デートします』
「リアちゃんよお、弱みに付け込まれてるのに気付いてるか?」
『私が中也さんにお誘いされて断ったことありますか』
そういや無かったな、と笑いながら髪を櫛でといてくれる。
ドライヤーも、髪触ってもらうのも久しぶり。
ずっと触っててほしいし、ずっとずっとかまっててほしい。
私のことだけずっと考えててほしい。
そしたら、触ってくれてるだけでもずっとこの人は私のものになったような気になれる。
『……ぁ、』
「…まだする?」
『い、いい』
「そうか、じゃあ撫でててやろうな」
『…もうリアのこと拾って、』
声に出して、そこで気づいた。
あ、今の伝えるつもりなかったのに。
『…………私のこと口説くなら一生かけて面倒見るくらいの覚悟してから言ってね。分かりました…?』
「一生な。分かった…うちの子になる?」
『…んーん、なれない。私の面倒見てたら、貴方本当に死んじゃうかもしれないから』
「どういうことだ?それは」
『私のこと食べるなら中也さんの子供になれるかも』
「……食べるってのは?」
『そのまんまの意味。……好きなように食いちぎって飲み込んで、ちゃんと消化してくれるならず〜っと一緒にいられるよ』
笑えねえこと提案すんな、と軽く軽くチョップされる。
本当のことなんだけどなあ。
『じゃあえっちする?』
「何、欲求不満なのお前?」
『…試してるの。いつになったら折れるかなあって』
「なんだ、残念。溜まってるってことなら手っ取り早く解消させてやったのに」
耳元で響いた声に、思わずドキリとさせられた。
『引かないんだ』
「引かないですよ?可愛らしいじゃねえの」
『じゃあ、私のこと気持ちよくさせるだけさせて、自分は放ったらかしでもいいって言ってるの?』
「…………今日だけならいいよ、お願いしてみな」
__そういう慰めがほしいんなら、仕方ねぇこともあるかもしれねえしなぁ__
『私に処理させたらいいじゃない。使っていいよ』
「俺まだお前のこと口説けてないから」
