第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
「ちょっと待ってよ、あんたにはこれからそのお得意の方法で稼いでもらうのよ?」
『?何考えてるのか知らないけれど、私そういうの興味ないから…するなら自分でしたら?』
癇に障ることを言ったのだろう。
女子高生程度の暴力じゃあ特に何も感じはしないが、沸点が低いらしかった彼女らから手が出され、口の中が切れる。
これ、レモンとか食べるといったいのよね。
そしてそこから倉庫に無理矢理連れて行かれ、そのまま中で、何かの体育用具に縄でキツめに拘束される。
そのまま口も塞がれて目隠しをされれば、簡単に懐かしい感覚になってきた。
希望を手放して、諦めて…開き直れば怖くない。
聞こえてきた何人かの男の声も、暗くなる倉庫の中も…身体に無闇に触れられるのも、怖くない。
「おお、確かにこれは上玉だ…まさか新入生にこんな子いたなんてなぁ?」
「にしても、中学ん時の後輩だっけ?えげっねぇなあいつら、入学早々これだろ?」
「金で俺らに売られたんだぜあんた…今日出会ったばかりの同級生に」
プチ、プチ、とシャツがはだけさせられていく。
タイツも破られれば、簡単に下着をずらされた。
『…ッ、……ぅ』
「はい、開脚〜っと…いい眺め、これ見てるだけでヌけるわもう」
中学の頃はまだマシだった。
こういう事に手を出すような馬鹿は、同じ年代にはほとんどいなかったから。
高校に上がるだけで、こうも変わるものなのか。
ツン、と触れられる突起に、身体を力ませる。
…慣れない、これだけは。
いつになっても、何度味あわされても、慣れられない。
しかしそこでふと、最近誰だかに聞いたような言葉を思い出した。
私の中に、少しだけ輝いて見えるほどに残っているその言葉を。
嫌だったら、嫌だと言っていいのだと…抵抗する権利は、誰にだってあるのだと。
試しに…辛うじて、という方が正しいのだろうか。
学年も名前も、顔も知らない男達に向けて、確かに私は首を横に振った。
「あ?…何、嫌なの?まあ嫌だ……っ、おい、足ばたつかせんな」
「っと、危ね…!…白縹ちゃんよォ、お前まさか彼氏持ちか??こんなハッキリしたキスマーク付けられてっけど」
突然なぞられたのは、右の鎖骨。
そんなことに身体が跳ねる…ダメだ、敵う気がしない。
意思を、手放した。
願うことを、諦めた。
私は彼との約束を守れなかったのだ。