第3章 誰そ彼時のエンジェルイヤリング
制服に着替えても結局中也は戻ってこなくて、私はそのまま学校に出向くことになった。
立原君は、あちらの事情も本人の口から聞くことが出来、私がそれを邪魔するつもりは無いのだと説明すれば、中々に打ち解けた気がするが。
制服姿を見せれば、一言。
「…なんで髪のリボン外したんだ?似合ってたのに」
『ふふ、乙女には乙女なりの事情というものがあるのですよ?立原君』
「あ?年頃の女っつったら、そういうのにこだわる時期だろ…まあ下ろしてんのもおかしくはねぇけど」
リボン…中也からもらった物のうちの一つの、黒色のもの。
つけて行こうと思ったけれど、やめにした。
何がどうなるか、まだ読めないし。
とりあえずは鞄の中にしまっておこうって。
結局は中也に頼まれた黒服さんが学校まで送り届けてくれ、それから教室に入ってから入学式に出席、また教室に戻ることに。
カルタや凜々蝶ちゃん達は同じクラスであったそうだが、私はそうではなく、一人別のクラスだった。
まあ、そう上手くはいかないか。
せめて同じなら、もう少しくらい気が紛れたはずなのだけれど。
ヒソヒソと聞こえる話し声…全部聞こえてんのよ、私は耳がいいのだから。
口に出さない心の言葉、全部全部聴こえてる。
____ねえ、あの子が噂の?
身体売ってんでしょ?街で目標決めて話しかけてくらしいよ。
あれに騙される男も男よね〜、可愛らしい顔しちゃってさ____
ああ、そろそろ無理だわ、こういう時は無理矢理力を使わないようにするに限る。
これが中々大変なんだから。
「あの、白縹さん?ちょっと一緒に着いてきてくんない?」
『…誰、貴女』
「前の席の人くらい覚えといてよ…ね!」
ぐ、と握られる手首。
無理やり立たされれば、そのまま廊下に連れ出される。
まあ、下手に騒いだって…もっと私の立場が無くなるだけだったし。
いっか、多分まだ初日だから、あっても何か隠されるとか、汚されるとかくらいだろうし。
案の定連れていかれた校舎裏では、五人の女の子に壁を背にして囲まれる。
「あんた、男とヤって金稼いでんだって?」
「経験豊富らしいじゃないの。清純そうに見えて結構やることやってんのね」
2回に繋がる階段の踊り場…その窓から、降ってきた水。
ああ、良かった。
やっぱり、外しておいて。
『…話、それだけ?…じゃあ教室戻るから』