第10章 アザレアのひととき
絶品珈琲を入れてくれ、お礼を述べながらあやしていればキャッキャとはしゃいで元気になって。
「ソファーで撫でて褒めてたら寝ました。あと離してくれる気配がないのでそのまま連れてきたんですが」
「ああうん、リアちゃんはそれでいいよ、ありがとうね中也くん。で、どうしたのかな?」
「いや、なんか妙にさっきから素直なんで…どっか体調崩してるんじゃないかと思って診ていただけたらなと」
「君もだいぶリアちゃんに慣れてきたねえ?…問題ないと思うよ、家に帰してあげられてなかったからね、単に眠れなかっただけでしょう」
「?仮眠と睡眠は毎日挟ませてたはずなんですが」
「一緒に寝てあげた?」
「それは色々と問題があるのでは?」
ふと、数刻前に聞いたようなフレーズに疑問を抱く。
「…えっ、まさか一人で寝れないとかそういう???」
「まあそんなところだよ、一人でいるの苦手なのほんとは。あんまり構ってあげないと一人で寂しいの我慢して、倒れるまで誰にも言えないんだからさぁ…難儀な子だよねえ」
困り顔で微笑ましそうにしてらっしゃるけれど、その実その言葉がグサリと俺の胸元に突き刺さったのを首領は見逃しはしなかったらしい。
「…ふぅん、泣かせたんだ?」
「……はい」
「中也くんの目の前で泣いちゃうくらいって、よっぽど嫌なことされたんだねぇ?何したの?」
「俺はただ仕事をですね…どうも他の奴らの仕事を見るのも嫌だったそうで」
「あはは、そりゃあ中也くんの負担が増えるのなんて許せないだろうねえリアちゃんは」
どういうことかと目を丸くして聞いていれば、はい、と手渡されるタブレット端末。
ここ一週間ほどでリアが片付けていったという仕事を見せていただいたはいい、そこまではよかった。
「…なんですかこの量?」
「君が寝かせておいたという時間、この子はちゃっかり君の仕事を事前にとって進めちゃってたってわけ。よっぽど嫌だったんだろうねえ、君にお仕事たくさんさせるのが」
「一言も聞いてないですよ、報告してきた分より明らかに多いじゃないですかこれ」
「そういう子なの。だからもうちょっと構ってあげるか…もうちょっと、頼ってあげてみてくれない?確かにリアちゃんはまだまだちっちゃいかもしれないけどね、本当に優秀な子だから。パートナーとして不服かい?」
「そんなわけないじゃないですか」
