第10章 アザレアのひととき
『…何、いらないんじゃないの。リアなんかいらないからさっさと捨てて美人と浮気するって言えばいいでしょお』
「なんの浮気だよ、仕事一段落付いたしご褒美にいつもの美味いエスプレッソが飲みてぇんだけどなぁ?」
『…………美味しいの?』
「あれ飲んだら疲れも全部吹っ飛びそうだ、いつも感謝してるよ」
『ほ、他の人がいれた珈琲飲んだりしてない??』
「俺に珈琲いれたがるような奴他にいねえから安心しろよ」
頬に手を添えて軽く涙を拭ってやりつつ、とりあえず本日はこのお嬢さんのご機嫌回復に努めるようにしようと心に誓った。
こんないい女泣かせちゃあなあ…?
「っと、そういや姐さんの用事ってのは?」
「ああ、そうじゃった。ほれ中也、リアと二人でたまには食事でもしてくるが良い…デートにくらい誘ってやれ」
「ご冗談を、デートなんて言ったらまたセクハラだ何だ言われるのがオチ…で……」
手渡されるチケットを見ながら、視界に入ってきたのはその子のキラキラした瞳だった。
いや、うん?そんなにディナーが好きなのかこいつ。
「そんなことはないと思うがのう…?リア、中也にデートに誘われたらどうする?」
『デ…っ、♡か、かわいい服持ってないからちょっと時間欲し…な、何着ていけばいいんですか…?』
えええ〜〜〜…?????
白縹さん?あなた白縹さんでお間違いないですか。
かわいい服ですか、そういう反応するんですか。
「食事が楽しめて雰囲気に合うもので大丈夫じゃよ、お主はなんでも似合うからのう♪」
『いや、だからあの…中也さんが、可愛いって思う服は』
「中也、服の好みは」
「あああ、俺!?!?あんまり露出が過度じゃなけりゃあいいんじゃねえか!!?あんまり薄いのも心配になるし…っていうかそれくらい俺が用意してやるよ、いくつか見に行きゃあいいだろ?気に入ったもん買ってやるから」
『……え、えええ…???♡』
びっっっくりした、びっくりした…こいつデートって言葉一つでこんな顔すんの?
ピュア過ぎねぇ…??
「お前モテそうなのにデートした事ねぇの?」
『だってそういうのは結婚してもいい人とって、あの…』
ん?
「初デート?」
『お、男の人にデート誘われたことない…』
「あの、リアさん?俺は結婚してもいい人なんすか…?」
『中也さんはあの、特別だから…』
へえ〜…?
