第10章 アザレアのひととき
「いやいや、十分特別扱いしてますって」
「そういう問題じゃない、リアは怒鳴られるのもきつく当られるのも苦手なんじゃ。何か悪いことでもしたのかえ?」
「俺が目離してる隙に外に行って、また怪我ばっかして帰ってきたら大変でしょうが!?」
『へっ、』
「ん…?……いや、中也?リアの事は別に考えていないなどと言ってはおらんかったかのう??」
「ええ、別にわざわざ考えなくても傍に置いておけば済む話でしょう?」
きゅぅ、と喉を鳴らして倒れかかるそいつを支えに入る。
うわ、顔真っ赤…どうしたこいつ。
「んで、まだ怒ってんの?お嬢さん」
『ぁ、あぅぁ…』
ちっちゃい子供がいやいやと駄々をこねるように胸を押して嫌がられる。
こんなテンパってんの珍しいな。
「リア、なんでそんな嫌がっておるんじゃ?」
『だ、だって恥ずかしい…っ』
ピシャリと、大人二人に稲妻が落とされたような衝撃が迸る。
なんて…?恥ずかしい???
お前そんなこと言うキャラだったか???
「えっと…恥ずかしい?俺が??」
『恥ずかしくないし!!!』
いやどっちだよ、嘘下手くそか。
うわぁ、ほんと俺のこと好きだなこいつ。
「俺が他の奴に取られて拗ねて出て行っちまったくせに、今更何言ってるんだよ」
『拗ね…?す、拗ねてない』
しかも相変わらず自覚してねえのかよ。
「ふうん?じゃあなんで出て行ったんだ?俺に断りもなく、勝手にこっそりと。俺は休憩取れっつって仕事取り上げたはずだったよなあ?」
『だって中也さんリアとは全然お話してくんなかったから…、』
疲労と寝不足でいよいよおかしくなってきたのか、目の前にいらっしゃるクソガキ様がえらく可愛らしく見えてきた。
おまえ俺のこと中也さんとか呼べたのかぁ??話してもらえなくて泣いちまうって何?話してやるってばいくらでも。
「よーしよしよし、話でもなんでもしてやるよこっち来い」
『うそつき、背が高くておっぱいおっきい人の方取ったっっ』
「ブッッ、…!!あいつは追い払っただろうが!?」
『リアだってスーツ脱いだらあれくらいあるもん!!!』
「脱がんでいいわ!!?わあったって、俺がお前より他の奴に構ってたのがダメだったんだな!?他には!!?」
『…コーヒーもお菓子もいらないって言われた』
ええぇ、そこ…???
怒るところそこ???
