第10章 アザレアのひととき

｢おー、違う違う。わかったわかった｣

『全然分かってないっ！！』

｢ほーれリアちゃん、幹部命令だ。戻っといで｣

『リアちゃ、……そんなに言うなら、仕方ないですね、まったく…』

手を出されるのを取ろうとしてハッとして、素手で触れるのをやめてそこに腕を回すことにした。
危な、ただでさえ勝手に色々読んでるのに。

｢…ち、中也さん…？あの〜｣

｢あ？手前はしばらく出禁だ、俺じゃなくても聞けんだろ｣

｢え、いや、でも｢反論があんのかよ？散々言ってくれてやがったことは今回だけは目ぇ瞑っててやる、次したら殺す｣ひｯ｣

とっとと出ていけ、と言われて逃げ出すように出て行ったあの人は、なんだったのだろう。
軽率に思考を読みそうになったが、ひとまずは聞いてみようかしら。

｢…お主ああいうのが趣味だったのかえ？｣

｢違いますよ、あんまりしつこいもんだから困ってたくらいです｣

『…仲良いのね』

｢あん？誰と｣

『色んな人と』

｢何でまたそんな顔して…？……何、俺が取られたと思ってたのかあ？？｣

ぷい、と顔を背けても面白おかしそうに笑われる。

｢違ぇよ、さっきの奴はろくでもねぇクレーム入れてきやがっただけで迷惑してたんだ…もう一人来てた奴もそんなところ。お前が出ていく必要ねぇから、な？｣

『…私だってあれくらい対処出来る』

｢できる出来ねぇの問題じゃねえの、あいつらお前の足引っ張ろうとしてたような奴らだぞ？そんな奴らの相手しなくていいんだよお前は｣

『へ…気付いて、？』

｢…何？｣

『近い！！！』

理不尽だろ！！と声を発されるものの、自分の心臓がおかしくなりそうだった。
何この人信じらんない、なんでそんなこと気づいてんのよ、頭おかしい…うん、やっぱり全部この人が悪い。

｢初じゃのうリア〜、中也はちゃんとリアのことを考えておったようじゃよ？良かったじゃないか｣

｢いや、別にそいつのことを考えてるとかいうわけじゃ…｣

『……あ、っそ。…誰とでもイチャイチャしとけば、低身長バカ幹部』

｢低身長！？言ったなてめ…ｯ！！？おい待て、なんでまた出て行く！！？｣

突然の大声にﾋﾞｸｯ､と反応して思わず紅葉さんに隠れれば、ため息をひとつ吐いて、しっかり間に入ってくれる。

｢中也、そう怒鳴りつけるでない。もう少しくらい優しくしてやらんか｣